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recipe 竹

竹の密集して生えている場所は腐らないそうだ
風通しが良いのと微生物が発生しないせいでな
それに竹が余分な水を吸い取ってくれる
この竹の青は土中から水分を吸い取ってる証だ
コウジは従者の一人のテツオに説明した
テツオは刀や銃器の扱いに長けていたので
呼び名でテツオと呼ばれるようになった
生まれついての名前は
誰にも呼ばれた事がない
本人も何処かに忘れてきた
年齢は20代後半で痩せた体系をしている
顔は童顔で見た目は10代のようだが
切れ長の瞳には静かな狂気を宿している
吸い取って青々してるなんて
オレ達みたいだな
竹は山の風通しを
オレ達は世の中の風通しを良くしてる訳だ
そういう事だテツオ
適度に狩り獲った方が竹も
人も生きやすいんだ
春になれば竹の子を取るだろ
あれは竹が増えすぎないようにする為の
管理の行為の一つだ
同時に食べる行為でもあるがな
耳を傾けていたテツオがコウジに
視線を向けて
一つ気になる事が
ただの単純な疑問なんですが
何故今回は生まれた育った場所を?
オレ達は誰も過去の事を語ろうともしないし
想い出しもしない
以前誰だったかなんて事も知らない
その方が都合がいいんだと想う
過去を知ればそれが足枷になる事があるから
そういうリスクがあるのに何故?
コウジはテツオの瞳をすっと見て
視線を竹に移して
此処が嫌いだからだよ
そうですか
テツオも生まれ育った場所は嫌いだった
近寄りたくもない未だにそう想う
そういう場所に足を再び踏み入れるって事は
嫌いな以上に許せないんだろう
コウジは多くは語らないが
此処でいつもの事をやるって事は
そういう事だ
コウジの口から言葉が零れる
テツオ此処を出るまでオレは海を見た事がなかった
初めて海を見て触れた時には
感動を憶えた
風や潮の香り海の感触
それまで触れた事の無いものだった
それと同時にオレは知らなかったんだ
自分に対する失望も
あれから10年以上経過した
そういうのが在って何かが変わった訳じゃない
ただ知ったそれだけだ
此処に住んでる連中は殆どが死ぬまで
此処から出ない
海を知る事も無く
触れる事もなく
生涯を終える
此処から出なければオレも同じだった
だがオレは此処から出て
別の生き方を見つけて
生き延びて居る
何の伝手もなく飛び出して
テツオ何故生き延びられてるんだと想う?
野垂れ死にもせず
生き延びる才能を持っていたから?
コウジは口元を緩め
運が良かっただけだ
それだけだ
竹の子で狩られずに此処に残ってる
竹も同じだ
ただ運が良かった
それだけだ
才能なんてものは
自分で持ってると想ってたら
それはそいつの勘違いだ
他人が認めてこその才能だ
他人が認める何かを持つ
それも生き延びる方法の一つだ
風が吹き竹を揺らし
笹や枝のすれ合う音が零れる
暫しの間2人ともその音と
竹の群がる景色の中に無言で佇んでいた

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