真昼の月
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/
日常と非日常の狭間
kenji0y
2014-10-18T19:48:54+09:00
ja
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recipe 拝む
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-10-18
マサト誰も死んじゃおらんのに棺桶を造っておるんかそれとも誰かくたばりそうなのがおったかいな?作業の手を続けながらどちらも違うよ住職手が空いてるから造ってるだけだ暇を持て余すより作業をしてる方が落ち着くんだ住職は頷いて成るほどと言葉を漏らしわしらの御経を読むのと同じようなもんじゃな手は口程に語るとはよう言うたもんじゃ顔にはそいつの人生が出るってのならタマに聴くよ人にはそういう側面も在るって事じゃよ住職は言葉を続ける裏と表が人に在るって事を聴くがそれだけじゃあないもっと多様な面を持ち合わせて人の性格や在り方はな多面体で成り立って居る2面だと想ってる奴は2面と想い込んでいるからそれしか見えないんじゃ住職つまりだ半紙みたいな裏と表じゃなく仏像のような立体って訳なのかまあそんなもんだなあ住職なんで仏像を人は拝みたがるのかな?マサトそれは簡単な事だ拝みたくなるように造って在るからじゃそういうものなのか?そういうものだもう一つ聴くが拝む行為は生きて行く上で必要なのか?住職は視線を空に移して金に困らない生き方が出来る人間はどれだけ居ると想う?一握りだろ住職は小さく頷き誰もが生きて行くのに常に不安を抱えながら日々を送るこの先無事に生きて行けるだろうか?等と想いながらな確固たる保障等何処にも存在しないのだからそう想うのは自然な事だ何も考えていない奴でも漠然とは想ってるどうにか成らないかとだが殆どの場合が現実を変えられない誰もが変えるだけのエネルギーと運と材料を持ち合わせて居る訳じゃ無いからなそういう現実の中に身を置いてると何かに縋りたくなる訳だ自身の環境を変えられるような何かになその何かとしての対象が人では無く力を持つ見えない存在つまり神や仏になるそして意志の伝達の方法が唯一の拝むだまあ拝むってのは鎮魂の拝むってのも在るから願うだけじゃあないんだそのお手伝いをするのがわしらじゃ生きて行く上で必要としてる人々が居るから拝むが在りわしらが存在する住職の話を聞いてるとなんだか棺桶と同じ様な感じがする人は必ず死ぬから棺桶を必要とするそれと変わらないんじゃないか?マサトは面白い事を言うな住職は笑みを浮かべて拝むと棺桶は死んだ本人と他人の為にも必要なんじゃつまり死ぬ言うのは本人だけの問題じゃないそういうことだ住職それは死んでまでも他人に関わるって事なんだな死ぬって事もメンドクサイもんだな生きるって事もそうだけどマサト単純な事だ生きるがメンドクサ..
未分類
kenji0y
2014-10-18T19:48:54+09:00
マサト誰も死んじゃおらんのに
棺桶を造っておるんか
それとも誰かくたばりそうなのがおったかいな?
作業の手を続けながら
どちらも違うよ住職
手が空いてるから造ってるだけだ
暇を持て余すより作業をしてる方が落ち着くんだ
住職は頷いて成るほどと言葉を漏らし
わしらの御経を読むのと同じようなもんじゃな
手は口程に語るとはよう言うたもんじゃ
顔にはそいつの人生が出るってのならタマに聴くよ
人にはそういう側面も在るって事じゃよ
住職は言葉を続ける
裏と表が人に在るって事を聴くが
それだけじゃあない
もっと多様な面を持ち合わせて
人の性格や在り方はな多面体で成り立って居る
2面だと想ってる奴は
2面と想い込んでいるから
それしか見えないんじゃ
住職つまりだ半紙みたいな裏と表じゃなく
仏像のような立体って訳なのか
まあそんなもんだ
なあ住職なんで仏像を人は拝みたがるのかな?
マサトそれは簡単な事だ
拝みたくなるように造って在るからじゃ
そういうものなのか?
そういうものだ
もう一つ聴くが拝む行為は生きて行く上で必要なのか?
住職は視線を空に移して
金に困らない生き方が出来る人間はどれだけ居ると想う?
一握りだろ
住職は小さく頷き
誰もが生きて行くのに常に不安を抱えながら
日々を送る
この先無事に生きて行けるだろうか?等と想いながらな
確固たる保障等何処にも存在しないのだから
そう想うのは自然な事だ
何も考えていない奴でも漠然とは想ってる
どうにか成らないかと
だが殆どの場合が現実を変えられない
誰もが変えるだけのエネルギーと運と
材料を持ち合わせて居る訳じゃ無いからな
そういう現実の中に身を置いてると
何かに縋りたくなる訳だ
自身の環境を変えられるような何かにな
その何かとしての対象が人では無く
力を持つ見えない存在
つまり神や仏になる
そして意志の伝達の方法が唯一の拝むだ
まあ拝むってのは
鎮魂の拝むってのも在るから
願うだけじゃあないんだ
そのお手伝いをするのがわしらじゃ
生きて行く上で必要としてる人々が居るから
拝むが在りわしらが存在する
住職の話を聞いてると
なんだか棺桶と同じ様な感じがする
人は必ず死ぬから棺桶を必要とする
それと変わらないんじゃないか?
マサトは面白い事を言うな
住職は笑みを浮かべて
拝むと棺桶は死んだ本人と他人の為にも
必要なんじゃ
つまり死ぬ言うのは
本人だけの問題じゃない
そういうことだ
住職それは死んでまでも他人に関わるって事なんだな
死ぬって事もメンドクサイもんだな
生きるって事もそうだけど
マサト単純な事だ
生きるがメンドクサイから
死ぬもメンドクサイ
死は生きるの延長に在るものだからな
住職オレはシンプルに生きてシンプルに死にたいもんだ
マサトそれはお前の在り方次第だ
そういうものなのか?
そういうモノだ
明日も晴れそうだ住職は空を見上げて
言葉を呟き静かに立ち去った
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recipe 鴉
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-10-11
聴き慣れた羽音が耳に触れる艶のある黒い羽根が雪子の傍らに舞い降りた声無き静かな会話が始まる空から見下ろすと此処の集落で誰が何をやってるか何処に居るか解るんだ明確にね人だけで無く犬や馬その他の動物までも前後の動きや周りに気を配っても空までも気にする奴はそう居ないそもそも空から見られてるそういう発想が欠けてるからねもし姿に気が付いても呑気に飛んでるんだなとしか想ってない上から見られるって事に関しては無防備なんだよね誰もが空から襲撃されるって事が殆どないからそうなるんだろうけど雪子はそうねと頷いた雨か雪でも降らない限り空なんて人は見上げたりしないものだところで雪子最近妙な奴らがうろついてるよね淀んだ匂いがするんだよねそうねそんな感じね濁りが身に付いて纏ってる雪子あいつらロクなもんじゃないね鴉にロクなもんじゃないんなんて言われるなんて哀れな感じもするが根の深い奴らだそうそう集会所で奴らの元締めとタケシの話しを聴いたんだけどね此処から10人程連れて行くらしいよ女も一人混じってるって言ってたよ誰?それ黒蜜って言ってたかな小夜それって何時の話し?小夜は雪子がこの鴉に付けた名前で名前を持たなかったこの鴉は名前を持った事を随分気に入ってる此処に来るちょと前の話しだよそう・・雪子は目を伏せた後に視線を空に移した奴らを死の淵に落とす事等その気になれば造作もないそうなれば黒蜜は家に戻れるだろうがそのうちにまた何処かに売られる嵌めになるだろう留まる場所も無ければ行く場所も無か黒蜜には死んで来世に期待するくらいしか可能性は無さそうだ残酷な未来が待ってるなら私の手で静かに眠らしてやるか苦しむ事も無く痛みも無く静かにに永遠の眠りに就ける黒蜜ももう少しマシな家に生まれれば違った未来を選ぶことが出来ただろうに貧困な家に生まれる事は困難な生き方を背負うもんだ好き好んで選択したのではないが私が私で在りたい為に生れて来た訳ではない生まれ育って環境に左右され私に成ってるそんな言葉が頭に浮かんだねえ雪子黒蜜に教えてあげた方がいいんじゃないのあんな奴らに着いて行ってもロクな目に合わないって事を小夜黒蜜は解ってるのよでも出来ないのよ断る事がえ??なんで家庭の事情って奴よ人間の世界って複雑なんだね逃げだせばいいだけだと想うんだけねそうだ想いだした黒蜜は棺桶屋と御団子食べてたよね最近御団子食べてないなあ食べさせてあげるわよ御団子欲しいなら小夜の黒い瞳を覗き込んだ後に..
未分類
kenji0y
2014-10-11T19:27:25+09:00
艶のある黒い羽根が雪子の傍らに舞い降りた
声無き静かな会話が始まる
空から見下ろすと
此処の集落で誰が何をやってるか
何処に居るか解るんだ明確にね
人だけで無く
犬や馬その他の動物までも
前後の動きや周りに気を配っても
空までも気にする奴はそう居ない
そもそも空から見られてる
そういう発想が欠けてるからね
もし姿に気が付いても
呑気に飛んでるんだなとしか想ってない
上から見られるって事に関しては
無防備なんだよね誰もが
空から襲撃されるって事が殆どないから
そうなるんだろうけど
雪子はそうねと頷いた
雨か雪でも降らない限り
空なんて人は見上げたりしないものだ
ところで雪子
最近妙な奴らがうろついてるよね
淀んだ匂いがするんだよね
そうねそんな感じね
濁りが身に付いて纏ってる
雪子あいつらロクなもんじゃないね
鴉にロクなもんじゃないんなんて言われるなんて
哀れな感じもするが根の深い奴らだ
そうそう
集会所で奴らの元締めと
タケシの話しを聴いたんだけどね
此処から10人程連れて行くらしいよ
女も一人混じってるって言ってたよ
誰?それ
黒蜜って言ってたかな
小夜それって何時の話し?
小夜は雪子がこの鴉に付けた名前で
名前を持たなかったこの鴉は名前を持った事を随分気に入ってる
此処に来るちょと前の話しだよ
そう・・
雪子は目を伏せた後に視線を空に移した
奴らを死の淵に落とす事等その気になれば造作もない
そうなれば黒蜜は家に戻れるだろうが
そのうちにまた何処かに売られる嵌めになるだろう
留まる場所も無ければ
行く場所も無か
黒蜜には死んで来世に期待するくらいしか
可能性は無さそうだ
残酷な未来が待ってるなら
私の手で静かに眠らしてやるか
苦しむ事も無く
痛みも無く
静かにに永遠の眠りに就ける
黒蜜ももう少しマシな家に生まれれば
違った未来を選ぶことが出来ただろうに
貧困な家に生まれる事は困難な生き方を背負うもんだ
好き好んで選択したのではないが
私が私で在りたい為に生れて来た訳ではない
生まれ育って環境に左右され私に成ってる
そんな言葉が頭に浮かんだ
ねえ雪子黒蜜に教えてあげた方がいいんじゃないの
あんな奴らに着いて行ってもロクな目に合わないって事を
小夜黒蜜は解ってるのよ
でも出来ないのよ断る事が
え??なんで
家庭の事情って奴よ
人間の世界って複雑なんだね
逃げだせばいいだけだと想うんだけね
そうだ想いだした
黒蜜は棺桶屋と御団子食べてたよね
最近御団子食べてないなあ
食べさせてあげるわよ
御団子欲しいなら
小夜の黒い瞳を覗き込んだ後に
雪子は棺桶屋ねと小さく呟いた
屍を埋める男は
濁っていなかった
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recipe ズレ
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-10-04
大きな違いはな神に頭を下げても他人から見たら信仰が深いと想われるだが簡単に金に頭を下げる奴は浅ましいと想われるそしてそんな奴は簡単に金から見捨てられる耳を傾けていたタカシがコウジオレはなそういう救いのない連鎖には関与したくないんだ買う方にしても売る方にしてもなコウジは目を細めてタケシを見つめた後視線を下に落として金に余裕のない人間が普通で居続けるって事が生き方としてはとても難しいんだそれを望む人が多いのも事実では在るんだがタケシがそれを望むのであればオレはこの間の話しを勧めない何かを強要するのは好きじゃないんだそうかだが嵌めるのは好きだろうと喉まで言葉が迫り出したがそれは言葉にしなかった生き方や在り方を決めるのは環境に大きく左右されるが結局はそいつ自身じゃないのかコウジそれはなタケシ僅かでも希望が残って居る場所までの話しだそこから落ちたら失望と絶望しかないそんな場所には自分の生き方なんて存在しないんだゆっくりと死に蝕まれて行くそれが在るだけだ羽根を?がれた鳥と同じだ何者かの餌食になるか死が迎えに来るかだ力を失ったとたんに現実はとても残酷になるコウジ此処の集落に居ても現実は残酷だよそうだったなコウジは口元に歪んだ笑みを浮かべた風が僅かに吹いて庭の樹から葉が舞い落ちた視線を上げた先には樹の上に鴉が佇んで静かな視線を落としているふと素朴な疑問が頭に湧いた鴉を食べた事があるか?コウジは頭を振って無いと応えたオレも無いんだが鴉を食べた事が在る奴は聴いた事が無いんでな聴いてみたくなったんだ何故食べないんだろうな?きっと味が不味いからだろもしくは狩るのに手間が掛かり過ぎるコウジもしかしたらもっと単純な事で色が黒いからじゃないか黒い食べ物ってのは身体に悪そうだろだから手を出さないんじゃないか見た目が悪いと味も悪いからなと呟いた後にコウジが人も同じようなもんだ見た目に性格やそいつの生き方が出るからな鴉に視線を移したコウジがアレは煮ても焼いても食えないだなだがなタケシ食べる方法が無い訳じゃない鴉がって訳じゃあないがそんな時はそんな時は?生で食うんだ意外と美味かったりもするが場合に寄っては死の淵を漂う想いもするそれじゃあ食わない方がマシじゃないかそうだよ生命の危機に瀕した場合はなだがものすごく美味かった場合はそれが重要な情報になったり金に変わったりするんだだからだ生で食う場合はまず生で食べた奴を探す事だそいつが居ない場合はどうするんだ..
未分類
kenji0y
2014-10-04T18:57:35+09:00
神に頭を下げても他人から見たら信仰が深いと想われる
だが簡単に金に頭を下げる奴は浅ましいと想われる
そしてそんな奴は簡単に金から見捨てられる
耳を傾けていたタカシが
コウジオレはなそういう救いのない連鎖には関与したくないんだ
買う方にしても売る方にしてもな
コウジは目を細めてタケシを見つめた後視線を下に落として
金に余裕のない人間が普通で居続けるって事が
生き方としてはとても難しいんだ
それを望む人が多いのも事実では在るんだが
タケシがそれを望むのであれば
オレはこの間の話しを勧めない
何かを強要するのは好きじゃないんだ
そうか
だが嵌めるのは好きだろうと喉まで言葉が迫り出したが
それは言葉にしなかった
生き方や在り方を決めるのは環境に大きく左右されるが
結局はそいつ自身じゃないのかコウジ
それはなタケシ
僅かでも希望が残って居る場所までの話しだ
そこから落ちたら失望と絶望しかない
そんな場所には自分の生き方なんて存在しないんだ
ゆっくりと死に蝕まれて行く
それが在るだけだ
羽根を?がれた鳥と同じだ
何者かの餌食になるか
死が迎えに来るかだ
力を失ったとたんに現実はとても残酷になる
コウジ此処の集落に居ても現実は残酷だよ
そうだったなコウジは口元に歪んだ笑みを浮かべた
風が僅かに吹いて庭の樹から葉が舞い落ちた
視線を上げた先には樹の上に鴉が佇んで
静かな視線を落としている
ふと素朴な疑問が頭に湧いた
鴉を食べた事があるか?
コウジは頭を振って無いと応えた
オレも無いんだが
鴉を食べた事が在る奴は聴いた事が無いんでな
聴いてみたくなったんだ
何故食べないんだろうな?
きっと味が不味いからだろ
もしくは狩るのに手間が掛かり過ぎる
コウジもしかしたらもっと単純な事で
色が黒いからじゃないか
黒い食べ物ってのは身体に悪そうだろ
だから手を出さないんじゃないか
見た目が悪いと味も悪いからなと呟いた後にコウジが
人も同じようなもんだ
見た目に性格やそいつの生き方が出るからな
鴉に視線を移したコウジが
アレは
煮ても焼いても食えないだな
だがなタケシ食べる方法が無い訳じゃない
鴉がって訳じゃあないが
そんな時は
そんな時は?
生で食うんだ
意外と美味かったりもするが
場合に寄っては死の淵を漂う想いもする
それじゃあ食わない方がマシじゃないか
そうだよ生命の危機に瀕した場合はな
だがものすごく美味かった場合は
それが重要な情報になったり金に変わったりするんだ
だからだ生で食う場合は
まず生で食べた奴を探す事だ
そいつが居ない場合はどうするんだ
コウジの口元が歪んだ
そういう事か
そうだよ誰かに食わして試すんだ
自らが負うリスクは少ない方がいいからな
他人に対しては残酷だなヤル事が
タケシ世の中ってな
他人の犠牲の上に成り立ってるんだ
だからと言ってだな
まあ聴けよ
それをな心の痛みとするか
そういうもんだと受け入れるか
それの違いで自身の在り方
身の置き場所が変わるだけだ
他人を使うか
他人に使われるか
それに依る立ち位置の違いと似たようなもんだ
雇用の立場に立つと残酷になれるが
雇われる方は成すがまま
成されるがままって事か
ただのパワーバランスだ
そういうのでバランスが保たれている
共存しなければ生きていけない
人の背負ってる業みたいなもんだ
一つ確実な事は
オレの生きてる現実と
タケシの生きてる現実の間にはズレが在る
が故に理解しずらい
それだけの事だ
同じように生きてるように見えるから
同じだと錯覚しがちだが
それぞれ違うんだ人って奴はな
コウジお前の話を聴いて想ったんだが
違うからそれを補って集団で生きようとするのが
人なんじゃないか
集団での生活をお互いに造って行くのが
人の生活だと想う
コウジのやってる事は在る種の間引きじゃないのか?
そうだなと呟きコウジは
まあそんなとこだと自嘲するように言葉を零した
僅かな沈黙が二人の間に横たわった
腰を上げてコウジに
そろそろ行くわ
そう伝えた
コウジは顔を上げて
じゃあなとさよならの代わりに言葉を返した
タケシはコウジに軽く手を上げ
背を向けた
一度も振り返る事も無く
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recipe 残酷
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-09-27
集会所の空き地に椅子を円形に並べてコウジを含めた6人は座って居る11人だ決まってるのは何れも20代だが一人だけ10代の女が居る追加でもう一人入るかもしれんがあまり期待はしてないコウジの説明を耳にした従者の一人で在るタイチがそれで暫くはと言い掛けて口元に歪んだ笑みを浮かべたそういう事だコウジが言葉を続けた人数も揃った事だしこれ以上此処に踏み止まる意味は無くなった出発は明後日の予定に決めたコウジは従者の連中を見渡して声のトーンを落として解ってるとは想うがそれまでに下手を打つなよ全員が無言の頷きで応えたコウジに視線が集中してる中テツオが視線を外し足音がと声を告げ背後を振りむいたこんなとこで会議中だったのか声の主はタケシだったタケシどうしたんだ愛想の笑顔を浮かべたコウジが声を掛けるその後の様子はどんな感じか気になったんでなコウジは周りに居る従者の連中に視線で簡単な意志を伝えたそれぞれは腰を上げて静かに立ち去ったタケシに視線を一度も合わせる事無くタケシは彼らの背中を眺めて良く飼い慣れされてる連中だと言葉を漏らしてコウジに向き直った座ったらどうだとコウジに椅子を勧められてコウジの横にタケシは腰を降ろした先程の質問に対しての応えだがとコウジは切り出した以前話した通りの人数で10人が行く事になってる若い連中ばかりだ一人予定外だったのが10代の女が混じってるタケシの表情が一瞬曇った誰だそれはカンスケのところの娘で黒蜜って名だまあ此処だけの話しだが生活に困ってるんで買ってくれと頼まれたんだカンスケが言うには子供はまだ4人も居るしこれからも金が掛かる今居る娘に嫁にでも行かれたらそれはそれで結納やなんやかやと金もかかるとてもじゃないが今日を暮らすだけでも難儀しとるのにそれこそ災難だそれに此処まで育てるのも只じゃなかったなんとかならんかとな頼まれたんだお前ならそういう道も知っとろうがとそう言った後カンスケはなこう言ったんだオレの眼をじっと見てな若い女なら高く売れるんだろコウジは一度視線を下に向けた後にカンスケがどういう男かは良く知らんが奴は一つだけ真実を語った若い女を高く売るタケシは気分の悪い話しだと低く呟いたなあタケシ貧困ってのはな醜くくとても残酷なんだ自分の娘でも金に成ると想えば簡単に売ってしまうそんな事をするのはカンスケだけじゃあない此処の集落では奴だけだが幾らでも居るそういう奴はタイプや事情は様々だが共通してるのは金を受け取る時地..
未分類
kenji0y
2014-09-27T19:25:02+09:00
コウジを含めた6人は座って居る
11人だ決まってるのは
何れも20代だが
一人だけ10代の女が居る
追加でもう一人入るかもしれんが
あまり期待はしてない
コウジの説明を耳にした従者の一人で在る
タイチがそれで暫くはと言い掛けて
口元に歪んだ笑みを浮かべた
そういう事だコウジが言葉を続けた
人数も揃った事だし
これ以上此処に踏み止まる
意味は無くなった
出発は明後日の予定に決めた
コウジは従者の連中を見渡して
声のトーンを落として
解ってるとは想うが
それまでに下手を打つなよ
全員が無言の頷きで応えた
コウジに視線が集中してる中
テツオが視線を外し
足音がと声を告げ
背後を振りむいた
こんなとこで会議中だったのか
声の主はタケシだった
タケシどうしたんだ愛想の笑顔を浮かべたコウジが声を掛ける
その後の様子はどんな感じか気になったんでな
コウジは周りに居る従者の連中に視線で
簡単な意志を伝えた
それぞれは腰を上げて静かに立ち去った
タケシに視線を一度も合わせる事無く
タケシは彼らの背中を眺めて
良く飼い慣れされてる連中だと言葉を漏らして
コウジに向き直った
座ったらどうだとコウジに椅子を勧められて
コウジの横にタケシは腰を降ろした
先程の質問に対しての応えだがと
コウジは切り出した
以前話した通りの人数で10人が行く事になってる
若い連中ばかりだ
一人予定外だったのが10代の女が混じってる
タケシの表情が一瞬曇った
誰だそれは
カンスケのところの娘で黒蜜って名だ
まあ此処だけの話しだが
生活に困ってるんで買ってくれと頼まれたんだ
カンスケが言うには子供はまだ4人も居るし
これからも金が掛かる
今居る娘に嫁にでも行かれたら
それはそれで結納やなんやかやと金もかかる
とてもじゃないが今日を暮らすだけでも難儀しとるのに
それこそ災難だ
それに此処まで育てるのも只じゃなかった
なんとかならんかとな
頼まれたんだ
お前ならそういう道も知っとろうがと
そう言った後カンスケはな
こう言ったんだ
オレの眼をじっと見てな
若い女なら高く売れるんだろ
コウジは一度視線を下に向けた後に
カンスケがどういう男かは良く知らんが
奴は一つだけ真実を語った
若い女を高く売る
タケシは気分の悪い話しだと低く呟いた
なあタケシ貧困ってのはな
醜くくとても残酷なんだ
自分の娘でも金に成ると想えば
簡単に売ってしまう
そんな事をするのはカンスケだけじゃあない
此処の集落では奴だけだが
幾らでも居るそういう奴は
タイプや事情は様々だが
共通してるのは
金を受け取る時
地面にこすり付けるくらい頭を下げて喜ぶ
カンスケも同じだった
涙を流さんくらいに喜んでいるんだ
だけどなそれは
オレに頭を下げてるんじゃないんだ
金に頭を下げてるんだ
神様ありがとうございます
あれと同じようにな
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recipe 囁き
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-09-20
子供をあやしてる黒蜜に女が関わったりしてないよね黒蜜と顔を近づけ黒蜜の瞳の奥を覗き込んだ黒蜜は一瞬瞳孔が開き動きが固まったが涼しげな笑顔を浮かべそんな事はないですよとさらっと流したそう?それならいいけど子供に視線を変えた女が千鶴お団子食べ終わった?美味しかったよ女を見上げた子供の口から言葉が漏れる食べ終わったらごちそう様でしょうごちそうさま子供は親の声を模倣して言葉を憶えるのだろうかそんな疑問が横切ったさあ帰ろうか千鶴子供が黒蜜の腕から離れ女の足元に寄り添ったじゃあねと言葉を残して小さな手を振り続ける子供と女の距離が遠ざかる2人の姿から視線を外した黒蜜がそろそろ私も行かなきゃ腰を上げて視線を向けたいっぱい御馳走になっちゃいましたねありがとうござます頭を下げる黒蜜何ですか?大事な事を言葉にしようと想うのだが上手く思考が纏まらない黒蜜の視線がじっと顔に張り付く一つ言い忘れた事を想いだしたオレはな生きた人間を棺桶に入れて埋めるような事はしない埋めるのは死んだ人間だけだこれはオレの仕事の作法だだが運ぶだけなら話しは別だ誰にも気ずかれず棺桶に入れて運ぶだけならな耳を傾けていた黒蜜が顔を近づけて耳元でやっぱり優しいんですねそう囁いた少しだけぞくっとするような囁きだった後2日此処に泊まるからどうするか自分で決めろ黒蜜はもう決めましたからそう言っておれの瞳を覗き込み微笑みを残して立ち去った後には夕暮れが近づく空の下の静かな風景だけが残っているもう決めましたから受け入れたとも拒否したとも取れるどちらを決めたのだろう何れにしても女って奴は一度決めたら迷わない誰の言葉だったかな残りの酒を静かに喉に流し込んだ
未分類
kenji0y
2014-09-20T19:11:21+09:00
関わったりしてないよね黒蜜と
顔を近づけ黒蜜の瞳の奥を覗き込んだ
黒蜜は一瞬瞳孔が開き動きが固まったが
涼しげな笑顔を浮かべ
そんな事はないですよと
さらっと流した
そう?それならいいけど
子供に視線を変えた女が
千鶴お団子食べ終わった?
美味しかったよ
女を見上げた子供の口から言葉が漏れる
食べ終わったらごちそう様でしょう
ごちそうさま
子供は親の声を模倣して言葉を憶えるのだろうか
そんな疑問が横切った
さあ帰ろうか千鶴
子供が黒蜜の腕から離れ
女の足元に寄り添った
じゃあねと言葉を残して
小さな手を振り続ける子供と
女の距離が遠ざかる
2人の姿から視線を外した黒蜜が
そろそろ私も行かなきゃ
腰を上げて
視線を向けた
いっぱい御馳走になっちゃいましたね
ありがとうござます
頭を下げる
黒蜜
何ですか?
大事な事を言葉にしようと想うのだが
上手く思考が纏まらない
黒蜜の視線がじっと顔に張り付く
一つ言い忘れた事を想いだした
オレはな生きた人間を棺桶に入れて
埋めるような事はしない
埋めるのは死んだ人間だけだ
これはオレの仕事の作法だ
だが
運ぶだけなら話しは別だ
誰にも気ずかれず
棺桶に入れて運ぶだけならな
耳を傾けていた
黒蜜が
顔を近づけて耳元で
やっぱり優しいんですね
そう囁いた
少しだけ
ぞくっとするような囁きだった
後2日此処に泊まるから
どうするか自分で決めろ
黒蜜は
もう決めましたから
そう言って
おれの瞳を覗き込み
微笑みを残して立ち去った
後には夕暮れが近づく空の下の
静かな風景だけが残っている
もう決めましたから
受け入れたとも
拒否したとも
取れる
どちらを決めたのだろう
何れにしても
女って奴は一度決めたら
迷わない
誰の言葉だったかな
残りの酒を静かに喉に流し込んだ
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recipe 異質
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-09-13
雪子さん呼ばれた女は僅かに笑みを浮かべた美しさと儚さを纏ってるような独特の存在感を漂わす女だった此処で生まれ育った女じゃない人間の持ってる質のようなものが異質だそれを感じる此処の人間は良く言えば大らかさが在る油断とか隙みたいなもんが身体に馴染んでる雪子と呼ばれた女にはそれが馴染んでいない拒絶してる匂いがするオレ自身も似たようなとこは持ち合わせているが何かが違うあの女みたいには慣れないって何かだ黒蜜が千鶴ちゃんと子供に声を掛けてを振る呼ばれた子供も小さな手を振り黒蜜に向かって駆け寄って来た黒蜜が大きくなったねと子供を抱き上げるこういう自然に子供に接する動作がオレには出来ないなと心で呟く男と女の違いなのか環境なのかは解らないが苦手だオレに取ってはだたぶん家庭とか家族を持つ事に向いてないのだろう子供が笑いながら黒蜜黒蜜と呼んでいるエライねえ千鶴ちゃん私の名前を憶えてるんだ眺めているオレの視線に子供の視線がぶつかり絡まった子供の瞳が大きく覗くオレも覗き返すがこんな時は次にどうすれば良いかが解らないとりあえず団子を食うかと勧めてみたお団子お団子子供が笑う黒蜜に団子を食わせてやれと告げると黒蜜が団子を一串掴み子供が食べやすいように串の上の方に団子をずらして食べさせ始めた子供にも団子なんて優しいんですねと黒蜜が言葉を零すたかだか団子だ大した事じゃないそれにお前もまだ子供じゃないかそうでしたね背後から静かに声が降って来たお団子頂いてありがとうございます雪子と呼ばれた女が佇んでいた気配を全く感じさせずに黒く深い瞳が顔を射す視線を外さずに黒蜜のお知り合いと小さな質問を投げかける黒蜜がさっき知り合ったばかり団子を分けて貰ったのとお寺に来てる棺桶屋さんよとそうなんだ見た事が無い人だねと想ってねちょと住職に用が在って立ち寄った帰りに此処で適当に団子と酒を飲んで居るとこなんだ気持良さそうね此処でお酒なんて女の眼には笑みが浮かんだあんたも飲むかい?この子を連れてるんで遠慮しとく気を使わないでいいのよと言葉を続けて千鶴ありがとうを言った?次の団子を口に入れようと開けたままの口であっと気が付いた表情を顔に張り付けてありがとうおじさんいいよ笑みを浮かべ子供は口を開けて団子に向き直った視線を上げて周りを見渡した後に呟くように女の口から最近此処も妙な奴らが入って来てね居座ってるようだからその後は女の口から言葉は出なかったが気を付けろの意味なんだろう寺の..
未分類
kenji0y
2014-09-13T19:15:41+09:00
雪子さん
呼ばれた女は僅かに笑みを浮かべた
美しさと儚さを纏ってるような独特の存在感を
漂わす女だった
此処で生まれ育った女じゃない
人間の持ってる質のようなものが異質だ
それを感じる
此処の人間は良く言えば大らかさが在る
油断とか隙みたいなもんが身体に馴染んでる
雪子と呼ばれた女にはそれが馴染んでいない
拒絶してる匂いがする
オレ自身も似たようなとこは持ち合わせているが
何かが違う
あの女みたいには慣れないって何かだ
黒蜜が千鶴ちゃんと子供に声を掛けてを振る
呼ばれた子供も小さな手を振り
黒蜜に向かって駆け寄って来た
黒蜜が大きくなったね
と子供を抱き上げる
こういう自然に子供に接する動作がオレには出来ないなと心で呟く
男と女の違いなのか環境なのかは
解らないが苦手だ
オレに取ってはだ
たぶん家庭とか家族を持つ事に向いてないのだろう
子供が笑いながら黒蜜黒蜜と呼んでいる
エライねえ千鶴ちゃん私の名前を憶えてるんだ
眺めているオレの視線に子供の視線がぶつかり絡まった
子供の瞳が大きく覗く
オレも覗き返すが
こんな時は次にどうすれば良いかが解らない
とりあえず
団子を食うかと勧めてみた
お団子お団子
子供が笑う
黒蜜に団子を食わせてやれと
告げると
黒蜜が団子を一串掴み
子供が食べやすいように串の上の方に団子をずらして
食べさせ始めた
子供にも団子なんて優しいんですねと黒蜜が言葉を零す
たかだか団子だ
大した事じゃない
それにお前もまだ子供じゃないか
そうでしたね
背後から静かに声が降って来た
お団子頂いてありがとうございます
雪子と呼ばれた女が
佇んでいた
気配を全く感じさせずに
黒く深い瞳が顔を射す
視線を外さずに黒蜜のお知り合いと
小さな質問を投げかける
黒蜜がさっき知り合ったばかり
団子を分けて貰ったのと
お寺に来てる棺桶屋さんよと
そうなんだ見た事が無い人だねと想ってね
ちょと住職に用が在って立ち寄った帰りに
此処で適当に団子と酒を飲んで居るとこなんだ
気持良さそうね此処でお酒なんて
女の眼には笑みが浮かんだ
あんたも飲むかい?
この子を連れてるんで遠慮しとく
気を使わないでいいのよと
言葉を続けて
千鶴ありがとうを言った?
次の団子を口に入れようと開けたままの口で
あっと気が付いた表情を顔に張り付けて
ありがとうおじさん
いいよ
笑みを浮かべ子供は口を開けて団子に向き直った
視線を上げて
周りを見渡した後に
呟くように女の口から
最近此処も妙な奴らが入って来てね
居座ってるようだから
その後は女の口から言葉は出なかったが
気を付けろの意味なんだろう
寺の住職もちらっとそんな話をしていたよ
そのうち出てくだろうって住職は言ってた
そうね満足したら出て行くでしょうね
こんな集落で何に満足するんだろうな
さあねと応えた女の瞳は意味在りげな影を湛えている
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recipe 黒蜜
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-09-06
だが女は顔色一つ変えずに生きてるのに埋めないでくださいよと微笑んでいた心配するな生きてる奴は埋めないよ冗談だから気にするな解ってますからところでお前は幾つなんだ18ですよ仕事はしてるのか?この時間に歩いてるくらいですから家の手伝いだけですよそれで食えてるならいいじゃねえかそれがなかなか厳しくってもうすぐ売られそうなんですペットが飼えなくなって売られるそんな口調で女の口から自身の事が語られる親にか?女が首を少し傾げて頷くそんな家なら売られる前に逃げればいいじゃねえか諦めのような微笑みを浮かべた女は受け入れ先も働く場所も無いのに何処かに逃げても辿り着く場所は同じかそれ以下だと想いますそれなら棲む場所が在るだけまだマシなんじゃないかとお前18にしては現実的な思考だなオレがお前と同じ年の頃には何も考えてなかったな勢いだけで生きていた酒で喉を湿らせて聴き忘れていた事を女に尋ねた名前は?黒蜜です良い名前だ自然に口から言葉が零れた女の視線が顔に張り付いてるのに気が付いたオレの名前を言ってないなマサトだ仕事は棺桶造りですねそうだ入れるのは死んだ人間だけだ前から気になってたんですけど中に入って生き返るなんて事はないのかなさあ?どうなんだろうな在るかもしれないし無いかもしれない埋めたら掘り返す事はないからなもしそんな事が在っても生きては出られないたぶんすごく絶望的な気分になるだろ助けを読んでも土の中からじゃ声は届かないし誰も気が付く事はないなんかそれって・・・女の言葉が途切れたどうした?何でもありません女の顔に曖昧な笑顔が浮かんでいた自分の事と想いを重ねたのだろうか女の顔を見つめてる内に言葉が零れた絶望的な状況って奴は土の中でも地上でもあんまり変わらないような気がするなただそんな状況でも生き延びる奴は生き延びる持って生まれた運の強さなのか偶然なのかその辺りは良く解らんけどな黒蜜お前は自分の運が強いと想うか?微妙なとこだと想います売られかけてますから酒を喉に流し込み店の女中に声をかけ筆と墨と半紙を持ってこさせた黒蜜名前を此処に書いてみろ墨に筆を浸し黒蜜は半紙に名前をさらりと書いた書かれた文字は全体のバランスの良さと流れるような勢いが文字に宿っていたオレは占いはやらないが運は強いと想うぞ文字にそう出てる占いやらないのに解るんですか解るんだよ文字に関してだけはな自分の書いた文字を見て黒蜜がありふれた書体だと想うんですけどねと零した時に少し..
未分類
kenji0y
2014-09-06T19:09:53+09:00
生きてるのに埋めないでくださいよと
微笑んでいた
心配するな生きてる奴は埋めないよ
冗談だから気にするな
解ってますから
ところでお前は幾つなんだ
18ですよ
仕事はしてるのか?
この時間に歩いてるくらいですから
家の手伝いだけですよ
それで食えてるならいいじゃねえか
それがなかなか厳しくって
もうすぐ売られそうなんです
ペットが飼えなくなって売られる
そんな口調で女の口から自身の事が語られる
親にか?
女が首を少し傾げて頷く
そんな家なら売られる前に逃げればいいじゃねえか
諦めのような微笑みを浮かべた女は
受け入れ先も働く場所も無いのに何処かに逃げても
辿り着く場所は同じかそれ以下だと想います
それなら棲む場所が在るだけ
まだマシなんじゃないかと
お前18にしては現実的な思考だな
オレがお前と同じ年の頃には何も考えてなかったな
勢いだけで生きていた
酒で喉を湿らせて
聴き忘れていた事を女に尋ねた
名前は?
黒蜜です
良い名前だ
自然に口から言葉が零れた
女の視線が顔に張り付いてるのに気が付いた
オレの名前を言ってないな
マサトだ仕事は
棺桶造りですね
そうだ
入れるのは死んだ人間だけだ
前から気になってたんですけど
中に入って生き返るなんて事はないのかな
さあ?どうなんだろうな
在るかもしれないし無いかもしれない
埋めたら掘り返す事はないからな
もしそんな事が在っても生きては出られない
たぶんすごく絶望的な気分になるだろ
助けを読んでも土の中からじゃ声は届かないし
誰も気が付く事はない
なんかそれって・・・
女の言葉が途切れた
どうした?
何でもありません
女の顔に曖昧な笑顔が浮かんでいた
自分の事と想いを重ねたのだろうか
女の顔を見つめてる内に言葉が零れた
絶望的な状況って奴は土の中でも
地上でもあんまり変わらないような気がするな
ただそんな状況でも生き延びる奴は
生き延びる
持って生まれた運の強さなのか
偶然なのか
その辺りは良く解らんけどな
黒蜜お前は自分の運が強いと想うか?
微妙なとこだと想います
売られかけてますから
酒を喉に流し込み店の女中に声をかけ
筆と墨と半紙を持ってこさせた
黒蜜名前を此処に書いてみろ
墨に筆を浸し黒蜜は半紙に名前を
さらりと書いた
書かれた文字は全体のバランスの良さと
流れるような勢いが文字に宿っていた
オレは占いはやらないが運は強いと想うぞ
文字にそう出てる
占いやらないのに解るんですか
解るんだよ文字に関してだけはな
自分の書いた文字を見て
黒蜜がありふれた書体だと想うんですけどねと
零した時に少し離れた場所から子供を連れた女が歩いて来るのが視界に触れた
黒蜜もそれに気が付き
声をその女に掛けた
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recipe 団子
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-08-30
人を殺すのに幾ら掛かる?オレは棺桶屋だ殺し屋じゃねえよふざけた事抜かしてると埋めるぞマサトは此処の集落の外れにある寺の住職に用が在り立ち寄った帰りに今日宿泊する宿の軒先に出してある長椅子に座りテーブルの上に置かれた団子を摘み日本酒を軽く飲んでいたところだった住職に用がと言っても大した用じゃない日頃仕事で世話になってるから酒を土産に顔を覗いた程度の事だ営業活動も兼ねた息抜きみたいなもんだ職場は此処から山一つ越えた街の方だ毎日同じ仕事場に行き同じ作業をするそれはそれで在りなんだが気持に少しづつ淀みが溜ってくる溜った淀みは何処かで流す事が必要だだから住職の元を訪れる仕事でだって理由でそうやって適当に淀みを流す眼の前には正確には椅子の隣には10代の女が居る小柄で人形のような顔だ童顔系の美少女という感じだ団子が運ばれて来た時にちょうど通り掛かったから一つ食うかと声を掛けた躊躇う事なく隣に座った女は団子を2串し口の中に納めた知らない人に声をかけられたら気を付けろって教えて貰ってないのかと喉まで声が出がかったが団子を勧めたのオレだしなと想い声を留めた代わりに腹が減ってるのかと質問すると女は頷きを入れたので店の女中に声をかけ団子をもう一皿注文した好きなだけ食えと女に声をかけ運ばれてきた女に団子を勧めたアナタは食べないんですかと団子の皿とオレを交互に見つめる女に食べたくなったら又注文するから気にするなと言い渡し日本酒を喉に流し込んだ団子を食べてる女を横眼に店の奥に声をかけお茶を持って来させたお茶まで頂いてと女が頭を下げた酒を勧める訳にはいかないからなと言うと女はですよねと微笑んだ穢れの無さそうな微笑みで惹かれる感情がざわざわしたがこういうやつがわりと危なかったりするんだよなと別の感情が囁いた団子の串が5本になった頃女が此処の人では無いですよねと質門のような疑問のような事を口にしたので棺桶屋で住職に用があり此処に来たんだと言葉にした時に女に人を殺すのに幾らかかると質問されてつい怒り口調で言葉を返してしまった口から言葉が出た後にこいつはまだ10代の女だったんだと反省めいた感情が起こった
未分類
kenji0y
2014-08-30T18:56:38+09:00
オレは棺桶屋だ殺し屋じゃねえよ
ふざけた事抜かしてると埋めるぞ
マサトは此処の集落の外れにある
寺の住職に用が在り立ち寄った帰りに
今日宿泊する宿の軒先に出してある
長椅子に座りテーブルの上に置かれた団子を摘み
日本酒を軽く飲んでいたところだった
住職に用がと言っても
大した用じゃない
日頃仕事で世話になってるから
酒を土産に顔を覗いた程度の事だ
営業活動も兼ねた息抜きみたいなもんだ
職場は此処から山一つ越えた街の方だ
毎日同じ仕事場に行き
同じ作業をする
それはそれで在りなんだが
気持に少しづつ淀みが溜ってくる
溜った淀みは何処かで流す事が必要だ
だから住職の元を訪れる
仕事でだって理由で
そうやって適当に淀みを流す
眼の前には
正確には椅子の隣には
10代の女が居る
小柄で人形のような顔だ
童顔系の美少女という感じだ
団子が運ばれて来た時にちょうど
通り掛かったから
一つ食うかと声を掛けた
躊躇う事なく隣に座った女は
団子を2串し口の中に納めた
知らない人に声をかけられたら気を付けろって
教えて貰ってないのかと
喉まで声が出がかったが
団子を勧めたのオレだしなと想い声を留めた
代わりに腹が減ってるのかと質問すると
女は頷きを入れたので
店の女中に声をかけ
団子をもう一皿注文した
好きなだけ食えと女に声をかけ
運ばれてきた女に団子を勧めた
アナタは食べないんですかと
団子の皿とオレを交互に見つめる女に
食べたくなったら又注文するから気にするなと
言い渡し
日本酒を喉に流し込んだ
団子を食べてる女を横眼に店の奥に声をかけ
お茶を持って来させた
お茶まで頂いてと女が頭を下げた
酒を勧める訳にはいかないからなと言うと
女はですよねと微笑んだ
穢れの無さそうな微笑みで
惹かれる感情がざわざわしたが
こういうやつがわりと危なかったりするんだよなと
別の感情が囁いた
団子の串が5本になった頃
女が此処の人では無いですよねと
質門のような疑問のような事を口にしたので
棺桶屋で住職に用があり此処に来たんだと言葉にした時に
女に人を殺すのに幾らかかると質問されて
つい怒り口調で言葉を返してしまった
口から言葉が出た後に
こいつはまだ10代の女だったんだと
反省めいた感情が起こった
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recipe 上と下
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-08-23
つまりこういう事かい?コウジの紹介で稼ぎのいい仕事に着ける3か月程度の短期から1年程の長期も選べるって事だなタケシは枡酒を飲み干してコウジに視線を充てたコウジはタケシの枡に酒を注ぎ港の仕事を仕切って居るんだが荷降ろしに運搬に仕分け仕事によっては多少きつかったりもするが賃金はかなりいいそれに仕事自体が途絶える事がない港は流通の要だからな始めた頃は取り扱う仕事の量も少なかったのだが10年もやってればそれなりの信用や付き合いも出来てきて取り扱う荷の量が半端なく増えてきてな今雇ってる人員じゃ捌ききれなくなってきてるんだ現状ではそれを無理して通してるんだが何時までもって訳にはいかないそのうち仕事に嫌気が射して止めるやつが出て来るのは眼に見えてるいくら稼ぎが良くても働き詰めは誰だって嫌気が射すもんだからな視線を一度落としたコウジは一呼吸置いて新たな雇用は避けて通れない課題になってるんだ雇用するに当たっては健康な身体と働く意欲さえあればいいんだがなるべくなら身元のしっかりした奴がいいんでなトラブルの防止やすぐ辞めて貰っても困るからな耳を傾けていたタケシが一人や2人って訳じゃないんだろ?雇用するのはコウジは頷きながら10人程と考えてる新たに10人も増えると古参との間に軋轢が生じたりするし入った奴らにしても色々と戸惑う事も在る誰かそいつらを纏める奴が必要となるんだ云わばリーダーが必要とされるんだそのリーダーにタケシが成ってくれれば多いに助かる人を纏めたり人の上に立つ資質がタケシには備わってるオレはタケシの事をそう見てるんだタケシは手の平の枡酒を見つめながら人を纏めたりするのは苦じゃないメンドクサイと想う事はあるけどなだがその前にオレは行くなんて一言も言ってないぞコウジは眼を細めて仕事を選ぶのに慎重さや思考する時間は必要だ簡単に返事するような相手ならオレはリーダーなんか頼んだりはしないタケシだからオレは頼んでいるんだそれと一つ言い忘れていたがリーダーには特別の手当てを毎月付ける賃金の差を付ける事によって階級が生じる職場に置いてはそれは必要な事なんだ階級を意識することがなコウジは枡酒を一気に飲み干し考えて置いてくれ良い返事を期待してるよそう言ってタケシの傍から立ち去った手に持った枡酒の酒の中にはタケシ自身の顔が映ってる冴えない話だあんな奴に仕事の世話をされるなんて何が階級だふざけた話しだ僅かばかりの金で雇ってどうせ使い捨てだろあんな奴..
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kenji0y
2014-08-23T19:20:52+09:00
コウジの紹介で稼ぎのいい仕事に着ける
3か月程度の短期から1年程の長期も選べるって事だな
タケシは枡酒を飲み干してコウジに視線を充てた
コウジはタケシの枡に酒を注ぎ
港の仕事を仕切って居るんだが
荷降ろしに運搬に仕分け
仕事によっては多少きつかったりもするが
賃金はかなりいい
それに仕事自体が途絶える事がない
港は流通の要だからな
始めた頃は取り扱う仕事の量も少なかったのだが
10年もやってれば
それなりの信用や付き合いも出来てきて
取り扱う荷の量が半端なく増えてきてな
今雇ってる人員じゃ捌ききれなくなってきてるんだ
現状ではそれを無理して通してるんだが
何時までもって訳にはいかない
そのうち仕事に嫌気が射して
止めるやつが出て来るのは眼に見えてる
いくら稼ぎが良くても働き詰めは誰だって嫌気が射すもんだからな
視線を一度落としたコウジは
一呼吸置いて
新たな雇用は避けて通れない課題になってるんだ
雇用するに当たっては健康な身体と働く意欲さえあればいいんだが
なるべくなら身元のしっかりした奴がいいんでな
トラブルの防止やすぐ辞めて貰っても困るからな
耳を傾けていたタケシが
一人や2人って訳じゃないんだろ?
雇用するのは
コウジは頷きながら
10人程と考えてる
新たに10人も増えると古参との間に軋轢が生じたりするし
入った奴らにしても色々と戸惑う事も在る
誰かそいつらを纏める奴が必要となるんだ
云わばリーダーが必要とされるんだ
そのリーダーにタケシが成ってくれれば
多いに助かる
人を纏めたり人の上に立つ資質がタケシには備わってる
オレはタケシの事をそう見てるんだ
タケシは手の平の枡酒を見つめながら
人を纏めたりするのは苦じゃない
メンドクサイと想う事はあるけどな
だがその前にオレは行くなんて一言も言ってないぞ
コウジは眼を細めて
仕事を選ぶのに慎重さや思考する時間は必要だ
簡単に返事するような相手なら
オレはリーダーなんか頼んだりはしない
タケシだからオレは頼んでいるんだ
それと一つ言い忘れていたが
リーダーには特別の手当てを毎月付ける
賃金の差を付ける事によって
階級が生じる
職場に置いてはそれは必要な事なんだ
階級を意識することがな
コウジは枡酒を一気に飲み干し
考えて置いてくれ
良い返事を期待してるよ
そう言ってタケシの傍から立ち去った
手に持った枡酒の酒の中にはタケシ自身の顔が映ってる
冴えない話だあんな奴に仕事の世話をされるなんて
何が階級だ
ふざけた話しだ僅かばかりの金で雇って
どうせ使い捨てだろ
あんな奴の話に耳を傾けるなんて
生活に余裕のない証だ
枡酒を喉に流し込む
一人で好きに生きてる時は適当な稼ぎがあればそれで自由だった
それが今じゃ嫁と子供3人の5人家族で
生活費が随分掛かるようになった
稼いでも稼いでも生活費にすべて消えて行く
消費する生活費以上に稼がなくては
貯金も生活の余裕も生まれない
だが稼ぐ手段も材料も此処の集落では限られてる
一つの田から収穫できる米の量が限られてるように
裕福になれる要素が何処にも無いんだよな此処には
上を見れば失望だらけだ
下を見れば諦めと絶望だ
綱渡りの現状をキープし続けるしか生きる手段がない
オレだけに限った事ではないが
貧困に塗れて生きて行くのは
正直しんどい話しだ
漕ぐ手を休めたとたんに沈む船に乗ってるようなもんだ
それでも
視線を枡酒に落とした
生きるしか無い
だがコウジのような奴に
更に底辺まで引きずられるのは
まっぴらだ
タケシは枡の中の酒を一息に飲み干した
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recipe 竹
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-08-16
竹の密集して生えている場所は腐らないそうだ風通しが良いのと微生物が発生しないせいでなそれに竹が余分な水を吸い取ってくれるこの竹の青は土中から水分を吸い取ってる証だコウジは従者の一人のテツオに説明したテツオは刀や銃器の扱いに長けていたので呼び名でテツオと呼ばれるようになった生まれついての名前は誰にも呼ばれた事がない本人も何処かに忘れてきた年齢は20代後半で痩せた体系をしている顔は童顔で見た目は10代のようだが切れ長の瞳には静かな狂気を宿している吸い取って青々してるなんてオレ達みたいだな竹は山の風通しをオレ達は世の中の風通しを良くしてる訳だそういう事だテツオ適度に狩り獲った方が竹も人も生きやすいんだ春になれば竹の子を取るだろあれは竹が増えすぎないようにする為の管理の行為の一つだ同時に食べる行為でもあるがな耳を傾けていたテツオがコウジに視線を向けて一つ気になる事がただの単純な疑問なんですが何故今回は生まれた育った場所を?オレ達は誰も過去の事を語ろうともしないし想い出しもしない以前誰だったかなんて事も知らないその方が都合がいいんだと想う過去を知ればそれが足枷になる事があるからそういうリスクがあるのに何故?コウジはテツオの瞳をすっと見て視線を竹に移して此処が嫌いだからだよそうですかテツオも生まれ育った場所は嫌いだった近寄りたくもない未だにそう想うそういう場所に足を再び踏み入れるって事は嫌いな以上に許せないんだろうコウジは多くは語らないが此処でいつもの事をやるって事はそういう事だコウジの口から言葉が零れるテツオ此処を出るまでオレは海を見た事がなかった初めて海を見て触れた時には感動を憶えた風や潮の香り海の感触それまで触れた事の無いものだったそれと同時にオレは知らなかったんだ自分に対する失望もあれから10年以上経過したそういうのが在って何かが変わった訳じゃないただ知ったそれだけだ此処に住んでる連中は殆どが死ぬまで此処から出ない海を知る事も無く触れる事もなく生涯を終える此処から出なければオレも同じだっただがオレは此処から出て別の生き方を見つけて生き延びて居る何の伝手もなく飛び出してテツオ何故生き延びられてるんだと想う?野垂れ死にもせず生き延びる才能を持っていたから?コウジは口元を緩め運が良かっただけだそれだけだ竹の子で狩られずに此処に残ってる竹も同じだただ運が良かったそれだけだ才能なんてものは自分で持ってると想ってたらそれはそいつ..
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kenji0y
2014-08-16T19:01:43+09:00
風通しが良いのと微生物が発生しないせいでな
それに竹が余分な水を吸い取ってくれる
この竹の青は土中から水分を吸い取ってる証だ
コウジは従者の一人のテツオに説明した
テツオは刀や銃器の扱いに長けていたので
呼び名でテツオと呼ばれるようになった
生まれついての名前は
誰にも呼ばれた事がない
本人も何処かに忘れてきた
年齢は20代後半で痩せた体系をしている
顔は童顔で見た目は10代のようだが
切れ長の瞳には静かな狂気を宿している
吸い取って青々してるなんて
オレ達みたいだな
竹は山の風通しを
オレ達は世の中の風通しを良くしてる訳だ
そういう事だテツオ
適度に狩り獲った方が竹も
人も生きやすいんだ
春になれば竹の子を取るだろ
あれは竹が増えすぎないようにする為の
管理の行為の一つだ
同時に食べる行為でもあるがな
耳を傾けていたテツオがコウジに
視線を向けて
一つ気になる事が
ただの単純な疑問なんですが
何故今回は生まれた育った場所を?
オレ達は誰も過去の事を語ろうともしないし
想い出しもしない
以前誰だったかなんて事も知らない
その方が都合がいいんだと想う
過去を知ればそれが足枷になる事があるから
そういうリスクがあるのに何故?
コウジはテツオの瞳をすっと見て
視線を竹に移して
此処が嫌いだからだよ
そうですか
テツオも生まれ育った場所は嫌いだった
近寄りたくもない未だにそう想う
そういう場所に足を再び踏み入れるって事は
嫌いな以上に許せないんだろう
コウジは多くは語らないが
此処でいつもの事をやるって事は
そういう事だ
コウジの口から言葉が零れる
テツオ此処を出るまでオレは海を見た事がなかった
初めて海を見て触れた時には
感動を憶えた
風や潮の香り海の感触
それまで触れた事の無いものだった
それと同時にオレは知らなかったんだ
自分に対する失望も
あれから10年以上経過した
そういうのが在って何かが変わった訳じゃない
ただ知ったそれだけだ
此処に住んでる連中は殆どが死ぬまで
此処から出ない
海を知る事も無く
触れる事もなく
生涯を終える
此処から出なければオレも同じだった
だがオレは此処から出て
別の生き方を見つけて
生き延びて居る
何の伝手もなく飛び出して
テツオ何故生き延びられてるんだと想う?
野垂れ死にもせず
生き延びる才能を持っていたから?
コウジは口元を緩め
運が良かっただけだ
それだけだ
竹の子で狩られずに此処に残ってる
竹も同じだ
ただ運が良かった
それだけだ
才能なんてものは
自分で持ってると想ってたら
それはそいつの勘違いだ
他人が認めてこその才能だ
他人が認める何かを持つ
それも生き延びる方法の一つだ
風が吹き竹を揺らし
笹や枝のすれ合う音が零れる
暫しの間2人ともその音と
竹の群がる景色の中に無言で佇んでいた
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recipe 階段
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-08-09
ばあちゃんそれって修行みたいだななんでそんな想いをしてまで結婚を続けるんかなそれはな結婚っちゅう階段を途中まで昇ったら簡単に降りれんからじゃコワイ階段なんだな結婚言うのはばあちゃんがミキオをじっと見た後ににやりと微笑んで半分は冗談で半分はほんまじゃミキオもして見れば解るなんで続けるのかがななあそうだろうタカオそうだなばあちゃんミキオも結婚したら解るよオレとばあちゃんを交互に眺めミキオは暫く予定がないからオレにシテみれば永遠のテーマみたいなもんだそんな大そうなもんじゃないわとミキオはばあちゃんに一蹴され早く家に入れてとミキオのばあちゃんに2人して家に連れて行かれ笹団子を食わされた帰りに嫁と子供に土産じゃからと手提げの籠に溢れるくらいの笹団子を持たされた家の玄関まで送りに出てくれたミキオがまた寄ってよばあちゃんあんな感じだけど喜んでるから解ってるよ子供の頃から知ってるからまた寄るようにするよじゃあと言いかけてミキオ連中には近づくなよロクな眼に合わないぞミキオは伏せ目がちにばあちゃんにも同じ事を言われてるよなおさらだな止めて置く方がいいタカオさんまでそう言うんなら近寄らないようにするよミキオ身を守る単純な方法は何だと想う銃を持つ事とか?もっとシンプルな方法が在るそれは関わらない事だ場所でも人でも危険な匂いのするものにはな手間が掛からず誰でも出来るこの手段は戦わずして勝つそんな感じだねそんな感じだじゃあなミキオ軽く手を振ってミキオの家を後にした
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kenji0y
2014-08-09T18:51:05+09:00
なんでそんな想いをしてまで結婚を続けるんかな
それはな結婚っちゅう階段を途中まで昇ったら
簡単に降りれんからじゃ
コワイ階段なんだな結婚言うのは
ばあちゃんがミキオをじっと見た後に
にやりと微笑んで
半分は冗談で半分はほんまじゃ
ミキオもして見れば解る
なんで続けるのかがな
なあそうだろうタカオ
そうだなばあちゃん
ミキオも結婚したら解るよ
オレとばあちゃんを交互に眺め
ミキオは暫く予定がないから
オレにシテみれば
永遠のテーマみたいなもんだ
そんな大そうなもんじゃないわと
ミキオはばあちゃんに一蹴され
早く家に入れてとミキオのばあちゃんに
2人して家に連れて行かれ
笹団子を食わされた
帰りに嫁と子供に土産じゃからと
手提げの籠に溢れるくらいの笹団子を持たされた
家の玄関まで送りに出てくれたミキオが
また寄ってよ
ばあちゃんあんな感じだけど
喜んでるから
解ってるよ子供の頃から知ってるから
また寄るようにするよ
じゃあと言いかけて
ミキオ連中には近づくなよ
ロクな眼に合わないぞ
ミキオは伏せ目がちに
ばあちゃんにも
同じ事を言われてるよ
なおさらだな止めて置く方がいい
タカオさんまでそう言うんなら近寄らないようにするよ
ミキオ身を守る単純な方法は何だと想う
銃を持つ事とか?
もっとシンプルな方法が在る
それは関わらない事だ
場所でも人でも
危険な匂いのするものにはな
手間が掛からず誰でも出来るこの手段は
戦わずして勝つ
そんな感じだね
そんな感じだ
じゃあなミキオ
軽く手を振ってミキオの家を後にした
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recipe 笹団子
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-08-02
最近逢ってなかったけどばあちゃん元気なのか?とても70には見えないないくらい元気だよ今日も畑に出てるミキオのばあちゃんには笹団子をよく食べさせて貰ったな今も暇な時によく作ってるよばあちゃんの笹団子は甘さがわりと少ないから食べやすくってオレは気に入ってるんだそれは言えるよな甘すぎると後から胃が重たくなるよなミキオはそうだよねって頷いた後にタカオさん時間ある?これから家に帰るだけだから長くならないなら大丈夫だじゃあオレの家にちょと寄ってよばあちゃんも喜ぶだろうしさそうだなミキオのばあちゃんの顔でも見に行くかミキオの家は桜の樹から歩いて10分程のとこに在る合掌創りの大きな家で庭には鶏を放し飼いにしてあり柴犬が一匹犬小屋の近くで寝転んでいたミキオがシロと犬の名前を呼ぶと駆け寄ってきてじゃれついた犬の名前は誰が付けたのかミキオに聴くとばあちゃんとの事だった名前の候補はシロとクロの2択だったがシロの方が縁起が良さそうだったのでシロになったなんかイメージ的にクロは絶対違うよなミキオミキオは笑いながらシロの頭を撫でて似合ってる名前で良かったなシロその姿に普段からシロを可愛がってるミキオの空気が漂う振り向いたミキオがタカオさんは犬を飼わないの?飼わないよ可愛いとは想うけどオレより先に死んでしまうだろ寿命が短いからそういうの考えるとどうも飼う気がしないんだそれは仕方のない事だね受け入れるしかしょうがないんだけどねたぶんね一緒に生きたって時間があればそういうのを曖昧にしてくれるんだと想ういつか想い出に変化するってやつだよ想いでか口から言葉が零れた時に背後からタカオじゃねえのかしわがれた声が耳に届いたミキオの祖母が畑から戻ったとこだったタカオ久しぶりだな笹団子食ってけばあちゃんの笹団子食べに来たんだよ返事をするとわしのは美味いからのうと眼を細めて顔に笑みを湛えた傍に立ったミキオのばあちゃんは腰も真っすぐで背丈も同じくらいだ同じようなモノを食べてるのにミキオは身長が一周り小さい遺伝子の設計図の違いだろうタカオ嫁とは上手く行ってるんか?問題なく過ごしてるよミキオのばあちゃんは2度頷き大事にするのは大事にされる事じゃなからな横からミキオが哲学的だなばあちゃんと口を挟むミキオそれは哲学でもなんでもない単純な事だ単純な事を複雑に考えるから難しくなんるんじゃ笹団子も同じでなこねくり回し過ぎると味が壊れる人間関係も同じじゃばあちゃん何だ?ミキオ結婚す..
未分類
kenji0y
2014-08-02T18:52:35+09:00
最近逢ってなかったけど
ばあちゃん元気なのか?
とても70には見えないないくらい元気だよ
今日も畑に出てる
ミキオのばあちゃんには笹団子をよく食べさせて貰ったな
今も暇な時によく作ってるよ
ばあちゃんの笹団子は甘さがわりと少ないから食べやすくってオレは気に入ってるんだ
それは言えるよな甘すぎると後から胃が重たくなるよな
ミキオはそうだよねって頷いた後に
タカオさん時間ある?
これから家に帰るだけだから長くならないなら大丈夫だ
じゃあオレの家にちょと寄ってよ
ばあちゃんも喜ぶだろうしさ
そうだなミキオのばあちゃんの顔でも見に行くか
ミキオの家は桜の樹から歩いて10分程のとこに在る
合掌創りの大きな家で庭には鶏を放し飼いにしてあり
柴犬が一匹犬小屋の近くで寝転んでいた
ミキオがシロと犬の名前を呼ぶと駆け寄ってきて
じゃれついた
犬の名前は誰が付けたのかミキオに聴くと
ばあちゃんとの事だった
名前の候補はシロとクロの2択だったが
シロの方が縁起が良さそうだったので
シロになった
なんかイメージ的にクロは絶対違うよなミキオ
ミキオは笑いながらシロの頭を撫でて
似合ってる名前で良かったなシロ
その姿に普段からシロを可愛がってるミキオの空気が漂う
振り向いたミキオが
タカオさんは犬を飼わないの?
飼わないよ可愛いとは想うけど
オレより先に死んでしまうだろ寿命が短いから
そういうの考えるとどうも飼う気がしないんだ
それは仕方のない事だね
受け入れるしかしょうがないんだけどね
たぶんね一緒に生きたって時間があれば
そういうのを曖昧にしてくれるんだと想う
いつか想い出に変化するってやつだよ
想いでか口から言葉が零れた時に
背後からタカオじゃねえのか
しわがれた声が耳に届いた
ミキオの祖母が畑から戻ったとこだった
タカオ久しぶりだな笹団子食ってけ
ばあちゃんの笹団子食べに来たんだよ
返事をすると
わしのは美味いからのうと眼を細めて
顔に笑みを湛えた
傍に立ったミキオのばあちゃんは
腰も真っすぐで
背丈も同じくらいだ
同じようなモノを食べてるのにミキオは
身長が一周り小さい
遺伝子の設計図の違いだろう
タカオ嫁とは上手く行ってるんか?
問題なく過ごしてるよ
ミキオのばあちゃんは2度頷き
大事にするのは大事にされる事じゃなからな
横からミキオが哲学的だなばあちゃんと口を挟む
ミキオそれは哲学でもなんでもない
単純な事だ
単純な事を複雑に考えるから難しくなんるんじゃ
笹団子も同じでな
こねくり回し過ぎると
味が壊れる
人間関係も同じじゃ
ばあちゃん
何だ?ミキオ
結婚するのも単純な事なのか?
正確に言えば
結婚の式を上げるのは単純な事じゃが
結婚した後の生活を送るのは
単純じゃない
労力と忍耐とが必要じゃ
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recipe 現実の話
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-07-26
アナタならどうしたの今度は妻からの質問だったオレなら同じだな眺めてるだけだ大勢の中に混ざるなんてぞっとするそれにしても変わったやつだな沢山の土産物を配るなんて余程余裕があるんだな妻は耳を傾けながら本物の余裕のある人はねそんな見せかけの振る舞いはしないものよアレはね偽物が本物らしく見せようとしてる行為なのよねそういうモノなのか?そういうものよ意味があるのかな?あの行為は妻は少し間を置いて海でね漁をする時にね撒き餌をやるの魚をね一つの場所に集める為に一定の期間餌を撒くの最初は少なかった魚もそこが餌場だと想ってね大量に集まるようになるの撒き餌をした以上の魚がねそれを網で収穫するのよ一気にね其処の魚が居なくなるまでねその場所で魚が取れなくなれば撒き餌の漁は終わりなの場所を変えて別の場所でまた餌を撒くの収穫の為の罠なんだなしかしこんな山奥の集落で餌を撒いても大した収穫はなさそうだけどなお金持ちが居る分けでは無いし妻は耳元に口を近づけ囁くように人がねお金に成るのよ冗談だろっと想ったが妻は真顔だった解りやすく言えば奴隷として売るのよそんな話しは都市伝説かと想ってたよ現実の話しよだから連中に近寄らないようにね解ったよ時間の経過と共に集落の殆どの人は連中を受け入れ夕暮れが過ぎると集会所での宴会が日常になった酒や肴を摘まんでの騒ぎは夜更けまで続く猟師の仲間に幾度か誘われたが酒と騒ぎは苦手なんだと断り続けた付き合いの長い連中なのでそれ以上の無理を言う事は無かったそんな中で狩猟の帰りに集落の外れに一本の大きな桜を眺めて居る時にミキオと出逢ったミキオは3才年下で子供の頃からわりと親しかった控え目な性格であまり騒いだりしないところが性格の波長があったのだろう少し疲れた雰囲気を漂わせたミキオはタカオさん猟の調子はどうですか?暮らして行ける程度には獲れてるよミキオは?秋に獲った鮭もそこそこ売れたしかんずりの売上もあるから生活は苦しくないんだけど連中が来てから生活のリズムが狂ってちょとね付き合いで連れて行かれてるミキオの姿が思考に浮かぶ断ればいいんだよミキオなるべく断るようにしてるんだけどね周りが結構感化されててね連中のとこに行くのが日課であり楽しみになってるそこに行けば何か楽しい事があるみたいな想像を持ってるんだそういうイメージを植え付けられたんじゃないのか?それは在るかもね実際には酒飲んで美味いもの食べて騒いでるだけだろ?そんな感じそれと賭け..
未分類
kenji0y
2014-07-26T19:05:09+09:00
アナタならどうしたの
今度は妻からの質問だった
オレなら同じだな
眺めてるだけだ
大勢の中に混ざるなんてぞっとする
それにしても変わったやつだな
沢山の土産物を配るなんて
余程余裕があるんだな
妻は耳を傾けながら
本物の余裕のある人はね
そんな見せかけの振る舞いはしないものよ
アレはね偽物が本物らしく見せようとしてる行為なのよね
そういうモノなのか?
そういうものよ
意味があるのかな?あの行為は
妻は少し間を置いて
海でね漁をする時にね
撒き餌をやるの
魚をね一つの場所に集める為に
一定の期間餌を撒くの
最初は少なかった魚も
そこが餌場だと想ってね
大量に集まるようになるの
撒き餌をした以上の魚がね
それを網で収穫するのよ一気にね
其処の魚が居なくなるまでね
その場所で魚が取れなくなれば
撒き餌の漁は終わりなの
場所を変えて別の場所でまた餌を撒くの
収穫の為の罠なんだな
しかし
こんな山奥の集落で餌を撒いても
大した収穫はなさそうだけどな
お金持ちが居る分けでは無いし
妻は耳元に口を近づけ
囁くように
人がねお金に成るのよ
冗談だろっと想ったが
妻は真顔だった
解りやすく言えば
奴隷として売るのよ
そんな話しは都市伝説かと想ってたよ
現実の話しよ
だから連中に近寄らないようにね
解ったよ
時間の経過と共に集落の殆どの人は連中を受け入れ
夕暮れが過ぎると集会所での宴会が日常になった
酒や肴を摘まんでの騒ぎは夜更けまで続く
猟師の仲間に幾度か誘われたが
酒と騒ぎは苦手なんだと断り続けた
付き合いの長い連中なので
それ以上の無理を言う事は無かった
そんな中で
狩猟の帰りに集落の外れに一本の大きな桜を眺めて居る時に
ミキオと出逢った
ミキオは3才年下で子供の頃からわりと親しかった
控え目な性格であまり騒いだりしないところが性格の波長があったのだろう
少し疲れた雰囲気を漂わせたミキオは
タカオさん猟の調子はどうですか?
暮らして行ける程度には獲れてるよ
ミキオは?
秋に獲った鮭もそこそこ売れたし
かんずりの売上もあるから生活は
苦しくないんだけど
連中が来てから生活のリズムが狂ってちょとね
付き合いで連れて行かれてるミキオの姿が思考に浮かぶ
断ればいいんだよミキオ
なるべく断るようにしてるんだけどね
周りが結構感化されててね
連中のとこに行くのが日課であり楽しみになってる
そこに行けば何か楽しい事があるみたいな想像を持ってるんだ
そういうイメージを植え付けられたんじゃないのか?
それは在るかもね
実際には酒飲んで美味いもの食べて騒いでるだけだろ?
そんな感じそれと賭け事もね
最初はね連中は負けてたんだけど
最近では勝てなくなってる
タマに誰かが大勝ちをしてりはするけどね
ミキオそれは連中の手の内で踊らされてるんだよ
たぶんそうなんだろうけど
誰もが嵌って止められなくなってる
ミキオもそれをやってるのか?
オレはやらないよ
ばあちゃんがうるさいんだ賭け事だけは手を出すなってね
年齢の割にはでかい体格のミキオの祖母の顔を想いだした
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recipe 在るがまま
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-07-19
オレはそう感じるのだが実際のとこ妻はどうなんだろう帰宅して僅かな疑問を妻に尋ねた単純な事だが子供がもっと欲しいと想うかとか家族は大勢の方がいいかとか妻は耳を傾けた後に質問に対して質問で応えたアナタはどう想うの?少しだけ間を置いて応えた大勢は苦手だ知ってるわ私もそうだもの無理をしなくていいのよ在るがままに生きればね世間になど合わそうとせずにね諭すような口調で妻は語りかけたそうかそれならいいんだオレは少ない家族で育ったからそれでいいんだがお前はどうなんだろうと想ってなそれは私も同じよ最初に出会った時言ったでしょうそうだったなねえそれより千鶴も寝た事だし潤んだ瞳で妻の柔らかな手が触れ濡れた唇が纏わり付いてきた妻の中で幾度も果てて妻のほてった身体を抱いてる時に在るがままに生きれば妻の言葉が頭の中で繰り返された他人の生き方を模倣しても出来るものじゃない自分の生き方しかできないのだから今の生活は気に要ってるこの生き方を続ければいいだけだこの生活しか出来ないのも現状だがこれが自分の在るがままだ妻の肌からは温もりが伝わってくる幸福ってやつは他人の温もりが在って感じる事が出来るのかもしれない妻の肌と幸福感を感じながら眠りに落ちた在るがままに生きれば妻とそんな話しをしてから3年が過ぎた千鶴は散歩にも付いてくるし妻の家事の手伝いも出来るようになった簡単な読み書きも出来る集落の人に名前を尋ねられれば千鶴ですと応えられる妻との仲は相変わらずで狩猟にも時々一緒に出掛けるその時は決まって獲物が手に入る妻が言うには山の神が味方してくれるからだそうだ狩猟の仲間が言うには腕が上がったのと運を妻が運んでくれてるどちらの言い分も当たってるのだろう散り始めた桜の花が風に舞う頃に集落に少しだけ変化が起きたコウジと言う男が集落に戻ってきたこの集落で生まれた男で年の頃は40過ぎで20代まで此処に居たが粗暴で賭け事の好きな男で集落のあちこちでトラブルを起こしていて誰にも相手にされないようになり居辛くなり在る日出て行ってそれっきりだった帰って来たコウジはとても高そうな衣類を身に着けていて従者5人と馬2頭を従えていたコウジは集落の集会所の前で集まった人達に若気の至りで此処に居た時は随分と迷惑をかけた今はそれなりに成功して余裕も出来たのでその恩返しも兼ねて生まれ育った此処に帰ってきたそう挨拶をして馬に積んである荷物の中から土産だから受け取って欲しいと酒や食べ物そして衣..
未分類
kenji0y
2014-07-19T19:16:05+09:00
オレはそう感じるのだが
実際のとこ妻はどうなんだろう
帰宅して僅かな疑問を妻に尋ねた
単純な事だが
子供がもっと欲しいと想うかとか
家族は大勢の方がいいかとか
妻は耳を傾けた後に
質問に対して質問で応えた
アナタはどう想うの?
少しだけ間を置いて応えた
大勢は苦手だ
知ってるわ
私もそうだもの
無理をしなくていいのよ
在るがままに生きればね
世間になど合わそうとせずにね
諭すような口調で妻は語りかけた
そうか
それならいいんだ
オレは少ない家族で育ったから
それでいいんだが
お前はどうなんだろうと想ってな
それは私も同じよ
最初に出会った時言ったでしょう
そうだったな
ねえそれより千鶴も寝た事だし
潤んだ瞳で妻の柔らかな手が触れ
濡れた唇が纏わり付いてきた
妻の中で幾度も果てて
妻のほてった身体を
抱いてる時に
在るがままに生きれば
妻の言葉が頭の中で繰り返された
他人の生き方を模倣しても
出来るものじゃない
自分の生き方しかできないのだから
今の生活は気に要ってる
この生き方を続ければいいだけだ
この生活しか出来ないのも現状だが
これが自分の在るがままだ
妻の肌からは温もりが伝わってくる
幸福ってやつは
他人の温もりが在って感じる事が出来るのかもしれない
妻の肌と幸福感を感じながら眠りに落ちた
在るがままに生きれば
妻とそんな話しをしてから3年が過ぎた
千鶴は散歩にも付いてくるし
妻の家事の手伝いも出来るようになった
簡単な読み書きも出来る
集落の人に名前を尋ねられれば
千鶴ですと応えられる
妻との仲は相変わらずで狩猟にも時々一緒に出掛ける
その時は決まって獲物が手に入る
妻が言うには山の神が味方してくれるからだそうだ
狩猟の仲間が言うには腕が上がったのと
運を妻が運んでくれてる
どちらの言い分も当たってるのだろう
散り始めた桜の花が風に舞う頃に
集落に少しだけ変化が起きた
コウジと言う男が集落に戻ってきた
この集落で生まれた男で年の頃は40過ぎで
20代まで此処に居たが
粗暴で賭け事の好きな男で
集落のあちこちでトラブルを起こしていて
誰にも相手にされないようになり
居辛くなり在る日出て行って
それっきりだった
帰って来たコウジはとても高そうな衣類を身に着けていて
従者5人と馬2頭を従えていた
コウジは集落の集会所の前で集まった人達に
若気の至りで此処に居た時は随分と迷惑をかけた
今はそれなりに成功して余裕も出来たので
その恩返しも兼ねて生まれ育った此処に帰ってきた
そう挨拶をして
馬に積んである荷物の中から
土産だから受け取って欲しいと
酒や食べ物そして衣服を振るまった
集まった人々は最初警戒していたが
一人が品物を受け取ると
後はもう雪崩のように誰もが手を出した
好奇心と興奮が渦を巻いて
誰もが飲み込まれた
それをコウジと従者は微笑みを湛えながら
静かに見つめていた
狭い集落の中で噂はすぐに耳に入り
夕飯の時に妻にその事を語った
妻はその一部始終を少し離れた場所から
静佇してたとの事だった
欲しいと想わなかったのか?の問いかけに妻は
祭り事は嫌いなのよの一言だった
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recipe 子供
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-07-12
翌日山一つ越えた街の市場に鹿肉を売りにでかけ高値で売る事ができた今年の豪雪で鹿は不猟だった為高値が着いたのだった収入が3カ月無くても暮らせる程の金額だった男は妻の功績もあるので妻に土産を買って帰った鹿の代金と土産の袋を渡して靴を脱いだ頃に妻の喜びの声が漏れた妻の手には1本の朱色の簪が握られていた似合うと想ってと妻に言葉を伝えたとても素敵な簪妻の口から溜め息めいた言葉が零れた束ねた黒髪に妻は土産の簪を挿して見せたその朱色の簪は妻にとても似合っていた鮮やかな朱色が妻の持つ艶のある黒髪や静かなる佇まいの美しさを引き立たせているとても似合っている妻はとても嬉しそうだ女は贈り物を喜ぶ誰かが口にしていたのを想いだした時々こうやって妻を喜ばせてやろうそれは言葉にせず心で密かに決めた簪がよほど気に要ったのかそれとも男の行為が嬉しかったのかそれ以降寝る時意外は簪は常に妻の髪の中にあった朱色の簪が妻の髪に在るのが日常となった頃に少しづつ妻の腹がふっくらと膨らみ始め雪が融け春が訪れた頃には明確になった数か月もすれば父親になり母親になるのだとその年の夏が過ぎ冬の訪れを肌で感じる頃に妻は女の子を出産した名前を千鶴と着けた鶴のように永く生きれますようにと美し在りますようにと千鶴は1年も経たない内に歩く事が出来るようになり言葉を憶えるのも早かった容姿も子供ながらに妻の面影を携えてる子で可愛らしさの中に美しさを湛えていたそれを妻に漏らすとそれはただの親ばかよと笑われるだけだったそれと錯覚だろうなとの想いはあるのだが千鶴を見てるとそこに妻の幼少を見てるような感覚があったそれを集落の幼馴染の妻に語ってみた女から見たらそういう感覚はないのか確認して見たかった幼馴染の妻は自分の生んだ女の子を見てると隣に子供の頃の自分が居て同じ事をやってる感覚かなと語ってくれた感じた事と同じようなんものだと納得したついでに男の子だったらどんな感じか尋ねた彼女は即答でまんま旦那の子供の頃そう応えた彼女は女の子一人と男の子2人産んで居る生活は大変だが子供はまだ欲しいそうだその感覚は理解できそうになかった単純に男と女の感覚の違いもしくは育った環境の違い少ない人数の家族で育ったから大勢居るのは馴染めそうもなかった
未分類
kenji0y
2014-07-12T19:00:01+09:00
翌日山一つ越えた街の市場に鹿肉を売りにでかけ
高値で売る事ができた
今年の豪雪で鹿は不猟だった為
高値が着いたのだった
収入が3カ月無くても暮らせる程の金額だった
男は妻の功績もあるので
妻に土産を買って帰った
鹿の代金と土産の袋を渡して
靴を脱いだ頃に妻の喜びの声が漏れた
妻の手には1本の朱色の簪が握られていた
似合うと想ってと妻に言葉を伝えた
とても素敵な簪
妻の口から溜め息めいた言葉が零れた
束ねた黒髪に妻は土産の簪を挿して見せた
その朱色の簪は妻にとても似合っていた
鮮やかな朱色が妻の持つ艶のある黒髪や
静かなる佇まいの美しさを引き立たせている
とても似合っている
妻はとても嬉しそうだ
女は贈り物を喜ぶ
誰かが口にしていたのを想いだした
時々こうやって妻を喜ばせてやろう
それは言葉にせず心で密かに決めた
簪がよほど気に要ったのか
それとも男の行為が嬉しかったのか
それ以降寝る時意外は簪は常に妻の髪の中にあった
朱色の簪が妻の髪に在るのが日常となった頃に
少しづつ妻の腹がふっくらと膨らみ始め
雪が融け春が訪れた頃には明確になった
数か月もすれば父親になり母親になるのだと
その年の夏が過ぎ冬の訪れを肌で感じる頃に
妻は女の子を出産した
名前を千鶴と着けた
鶴のように永く生きれますようにと
美し在りますようにと
千鶴は1年も経たない内に
歩く事が出来るようになり
言葉を憶えるのも早かった
容姿も子供ながらに妻の面影を携えてる子で
可愛らしさの中に美しさを湛えていた
それを妻に漏らすと
それはただの親ばかよと
笑われるだけだった
それと
錯覚だろうなとの想いはあるのだが
千鶴を見てると
そこに妻の幼少を見てるような感覚があった
それを集落の幼馴染の妻に語ってみた
女から見たらそういう感覚はないのか
確認して見たかった
幼馴染の妻は自分の生んだ女の子を見てると
隣に子供の頃の自分が居て
同じ事をやってる感覚かなと
語ってくれた
感じた事と同じようなんものだと納得した
ついでに男の子だったら
どんな感じか尋ねた
彼女は即答でまんま旦那の子供の頃
そう応えた
彼女は女の子一人と
男の子2人産んで居る
生活は大変だが子供はまだ欲しいそうだ
その感覚は理解できそうになかった
単純に男と女の感覚の違い
もしくは育った環境の違い
少ない人数の家族で育ったから
大勢居るのは馴染めそうもなかった
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recie 奇妙な感触
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-07-05
伏せている2人の姿を隠すように動くなよそう願いながら這いずり前に進む少しづつ降る雪の勢いは増し続けれる雪のカーテンが敷かれたようだ10m程の距離を詰めるのに5分程かかった鹿は射程距離の中に入った猟銃を構え鹿に的を向ける引き金に指をかけ絞るその時に鹿が首をこちらに向け視線が合った逃げられる瞬間に想ったが鹿の瞳の中には逃げられないと悟った悲哀が混じっていたそれは心で感じたその瞬間の鹿との交信だった次の瞬間には猟銃の引き金を絞っていた銃声が響いた時には鹿は倒れていた倒れた鹿に駆け寄った時には鹿の体温はまだ温かく生命の残骸があった妻は鹿の身体を触りながら大きな鹿ねと微笑んでいたが奇妙な感触が残っていた仕留めた鹿はあの瞬間に逃げる事が出来たはずなのに逃げなかったいや逃げる事が出来なかったのか今迄の経験ならあの一瞬で確実に逃げられていたねえまず血を抜くのでしょう妻の声に我に還った身体と思考が後処理の行動のモードに変化する鹿の血を抜き肉の劣化を防止させ木を集め簡易のソリを作り仕留めた鹿を載せ妻と2人で引いて家に向かうこの工程が2人だと最も助かる100キロの獲物を雪の上で滑りやすいとは言え引いて行くのは一人だととてもつもない重労働だ鹿の重みをソリを弾く手に感じながら妻を猟に連れだした事は良い結果に繋がったそれをひしひしと想った生活して行く上でも良いパートナーだが猟に置いても良きパートナーになるのでは家の事もあるので頻繁には無理だろうが時折り妻とこうして猟をするのも悪くは無いな獲物を得て帰る妻との家路は一人での時とは違う味わいだった一人の時より断然早く帰り着いたがそれでも夕暮れに近い時間だった男は早速鹿を解体し妻は風呂と夕飯の準備にかかった部位を切り分け適度な大きさに鹿の肉をカットし売り物と自宅で使う肉に分け夕食用にと妻に肉の一部を渡した妻の手によって鹿肉は表面を炙って冷水で締めたタタキと味噌とニンニクを使った鍋になった鹿肉のタタキはとても柔らかく噛むと口の中で肉汁がじんわりと沁みて来る味わいで絶品だった今迄食べた鹿肉の中でもこれほど上手く感じた事はなかった妻も鹿肉の味に眼を細めて喜んでいた雪子時々でいいのだけどまた猟に出かけよう鹿の味を堪能しながら妻に言葉をかけたそうねまた行ってみたい妻は鍋から移した小皿にかんずりをかけながら視線だけ男に向け応えた妻の瞳の中には好奇心が見えたきっと狩猟が新鮮に想えたのだろう自分自身も初めて狩猟に..
未分類
kenji0y
2014-07-05T19:04:13+09:00
伏せている2人の姿を隠すように
動くなよそう願いながら
這いずり前に進む少しづつ
降る雪の勢いは増し続けれる
雪のカーテンが敷かれたようだ
10m程の距離を詰めるのに5分程かかった
鹿は射程距離の中に入った
猟銃を構え鹿に的を向ける
引き金に指をかけ絞る
その時に鹿が首をこちらに向け
視線が合った
逃げられる
瞬間に想ったが
鹿の瞳の中には
逃げられないと悟った悲哀が混じっていた
それは心で感じたその瞬間の鹿との交信だった
次の瞬間には猟銃の引き金を絞っていた
銃声が響いた時には鹿は倒れていた
倒れた鹿に駆け寄った時には
鹿の体温はまだ温かく
生命の残骸があった
妻は鹿の身体を触りながら大きな鹿ねと
微笑んでいたが
奇妙な感触が残っていた
仕留めた鹿はあの瞬間に逃げる事が出来たはずなのに
逃げなかった
いや逃げる事が出来なかったのか
今迄の経験ならあの一瞬で確実に逃げられていた
ねえまず血を抜くのでしょう
妻の声に我に還った
身体と思考が
後処理の行動のモードに変化する
鹿の血を抜き肉の劣化を防止させ
木を集め簡易のソリを作り
仕留めた鹿を載せ
妻と2人で引いて家に向かう
この工程が2人だと最も助かる
100キロの獲物を雪の上で滑りやすいとは言え
引いて行くのは
一人だととてもつもない重労働だ
鹿の重みをソリを弾く手に感じながら
妻を猟に連れだした事は良い結果に繋がった
それをひしひしと想った
生活して行く上でも良いパートナーだが
猟に置いても良きパートナーになるのでは
家の事もあるので
頻繁には無理だろうが
時折り妻とこうして猟をするのも
悪くは無いな
獲物を得て帰る妻との家路は
一人での時とは違う味わいだった
一人の時より断然早く帰り着いたが
それでも夕暮れに近い時間だった
男は早速鹿を解体し
妻は風呂と夕飯の準備にかかった
部位を切り分け適度な大きさに鹿の肉をカットし
売り物と自宅で使う肉に分け
夕食用にと妻に肉の一部を渡した
妻の手によって鹿肉は
表面を炙って冷水で締めたタタキと
味噌とニンニクを使った鍋になった
鹿肉のタタキはとても柔らかく
噛むと口の中で肉汁がじんわりと沁みて来る味わいで
絶品だった
今迄食べた鹿肉の中でも
これほど上手く感じた事はなかった
妻も鹿肉の味に眼を細めて喜んでいた
雪子時々でいいのだけど
また猟に出かけよう
鹿の味を堪能しながら
妻に言葉をかけた
そうねまた行ってみたい
妻は鍋から移した小皿にかんずりをかけながら
視線だけ男に向け応えた
妻の瞳の中には好奇心が見えた
きっと狩猟が新鮮に想えたのだろう
自分自身も初めて狩猟に連れて行って貰って
猟銃で獲物が倒れた時の瞬間に興奮を憶えた
その感覚が今の妻に在るのかもしれない
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recipe 鹿
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-06-28
1時間程歩き休憩を取った雪山とは言え足場を取られる雪道を1時間も歩けばうっすらと汗が滲む隣に腰をかけた妻の様子を見ると涼しげな顔で息一つ乱れていない意外と女の方が持久力は在るもんだと感心する座って妻と談笑をしてる時に男は少しだけ狩りのレクチャーをした動物の足跡や糞が雪に残っているそれを身落とさない事が大事だとか動く獲物を見つけても自らが動けば自分の位置が風上だとすぐに悟られる伏せて待ち悟られないように近づき一撃で仕留める狩猟とはそういうものだ狼の狩りみたいねと妻は言葉を漏らした男は頷き似てるかもなと呟いた10分程休憩を取り再び歩きだした視界に映るのは全てが真っ白な雪に覆われた木々や山の斜面動くモノのない無音の世界に2人で居るようだ獲物の痕跡も姿も何処にも見当たらないただ雪の世界だけが延々と広がっている確実な事は獲物は何処に静かに潜んでいるそれを見つけられるかそれとも見つけられずに徒労に終わるか何れかだ妻の足のリズムなら当初の予定を変更して獲物の潜んでいる可能性の高い山の奥近くまで足を延ばしても大丈夫だろうそう判断してルートを変更して山の奥の方に向かった妻はペースを乱さず黙々と着いて来る途中で休憩を1度取り時間にして昼前に当たる頃妻が雪に埋もれた岩山の影を指差し鹿の影が見えたとそっと背後から耳打ちをした見渡す限りでは鹿の姿は無く静かな雪景色だけが横たわって居る岩山までの距離は約80m男の持つ猟銃の射程距離は無風状態で約70m向かい風だとさらに距離は短くなる男は妻に腰を屈めるように手で合図をし自身も屈み背中に背負っている猟銃を降ろし腹ばいになった柔らかく冷たい雪の感触がじんわりと身体に伝わる隣で妻も同じ姿勢を取り岩山に視線を張り付かせている静止した風景に溶け込んだ2人に時間だけが流れる空からは小さな粉雪が舞い始めた視線の先の岩山の付近にも粉雪は舞い降り真っ白な雨のように風景の絵具で世界を塗り変えて行き出した小さな風が頬を撫で通り過ぎる舞い降りる雪に小さな変化が現れる雪の流れが左右に揺れぶれたように見えた次の瞬間には流れは巻き上がる渦に変わり粉雪を巻き散らし始めた岩山の影から雪が大きく動いたそう見えたのは眼の錯覚で潜み雪に塗れた大きな鹿だった遠目だが体重は100キロ程ある大物だ鹿の姿に反応して猟銃の先を向けるが射程距離に及ばない鹿はこちらの存在に気が付いていない首を振り辺りを窺っている渦を巻き舞い散る雪にただ動けずに居..
未分類
kenji0y
2014-06-28T19:09:52+09:00
1時間程歩き
休憩を取った
雪山とは言え足場を取られる雪道を1時間も歩けば
うっすらと汗が滲む
隣に腰をかけた妻の様子を見ると
涼しげな顔で息一つ乱れていない
意外と女の方が持久力は在るもんだと感心する
座って妻と談笑をしてる時に
男は少しだけ狩りのレクチャーをした
動物の足跡や糞が雪に残っている
それを身落とさない事が大事だとか
動く獲物を見つけても
自らが動けば
自分の位置が風上だとすぐに悟られる
伏せて待ち
悟られないように近づき
一撃で仕留める
狩猟とはそういうものだ
狼の狩りみたいねと妻は言葉を漏らした
男は頷き
似てるかもなと呟いた
10分程休憩を取り
再び歩きだした
視界に映るのは全てが真っ白な雪に覆われた木々や山の斜面
動くモノのない無音の世界に2人で居るようだ
獲物の痕跡も姿も何処にも見当たらない
ただ雪の世界だけが延々と広がっている
確実な事は
獲物は何処に静かに潜んでいる
それを見つけられるか
それとも見つけられずに徒労に終わるか
何れかだ
妻の足のリズムなら当初の予定を変更して
獲物の潜んでいる可能性の高い山の奥近くまで足を延ばしても大丈夫だろう
そう判断して
ルートを変更して山の奥の方に向かった
妻はペースを乱さず黙々と着いて来る
途中で休憩を1度取り
時間にして昼前に当たる頃
妻が雪に埋もれた岩山の影を指差し
鹿の影が見えたとそっと背後から耳打ちをした
見渡す限りでは鹿の姿は無く
静かな雪景色だけが横たわって居る
岩山までの距離は約80m
男の持つ猟銃の射程距離は無風状態で約70m
向かい風だとさらに距離は短くなる
男は妻に腰を屈めるように手で合図をし
自身も屈み背中に背負っている猟銃を降ろし
腹ばいになった
柔らかく冷たい雪の感触がじんわりと身体に伝わる
隣で妻も同じ姿勢を取り
岩山に視線を張り付かせている
静止した風景に溶け込んだ2人に時間だけが流れる
空からは小さな粉雪が舞い始めた
視線の先の岩山の付近にも粉雪は
舞い降り真っ白な雨のように
風景の絵具で世界を塗り変えて行き出した
小さな風が頬を撫で通り過ぎる
舞い降りる雪に小さな変化が現れる
雪の流れが左右に揺れぶれたように見えた
次の瞬間には流れは巻き上がる渦に変わり
粉雪を巻き散らし始めた
岩山の影から雪が大きく動いた
そう見えたのは眼の錯覚で
潜み雪に塗れた大きな鹿だった
遠目だが体重は100キロ程ある大物だ
鹿の姿に反応して猟銃の先を向けるが
射程距離に及ばない
鹿はこちらの存在に気が付いていない
首を振り辺りを窺っている
渦を巻き舞い散る雪にただ動けずに居る
小さな粉雪は粒の大きな雪に変化して空から降り注ぐ
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recipe 狩り
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-06-21
その日から女との暮らしが始まり家事や料理は女が全てするようになったそれがとても自然な日常のように以前からずっと続いてる暮らしのように女はとても滑らかに生活の中に融け込んでいった眼を覚ました時には女の肌があり眠りに着く時にも女の肌があるそれが日常で在る事に変化した女と暮らし始めた事は集落の人々にすぐに知れた最初は突然に現れた女の事を不審に感じてるものも居たが男に対する献身的な女の態度や2人の幸福そうな暮らしぶりからその想いは消えていった同居を始めて半年も経った初夏を迎える頃籍を入れて2人は夫婦になったこのままでもいいけど男の腕枕の中で女は小さく呟いた後に妻の座を男に望んだ結果だった男もそろそろそんな話しをすべきかなとは想ってはいたが口に出せずに居たシリアスは話しではないが重要な話しは切りだすタイミングが難しいそれを先伸ばしにしていた夫婦になって何かが眼に見えて変わった訳ではなかった同じような日常が続く僅かな違いは少しだけ関係性に根が這ったような感じがした2人自由に咲く花だったのが樹に変化したこれから沢山の枝を着け花を咲かせ伸びて行く樹になるのだろう朽ち果てるまで夏も過ぎ足早の秋が行き夫婦になって初めての冬は豪雪だった男は山に猟に出るのだが獲物を見つけられず手ぶらで帰る日々が続いた猟で獲物を持ち帰る事が出来なければ収入は入らない貯は在るのだがこの状態が延々と続けばそれも何時かは食い潰す雪深い山の中では他に変わる収入源もない狩りに頼るしかない落胆の色が日々濃くなって行く男に妻となった女が夕食の後声を掛けた明日は私が一緒に狩りに行きましょうと男は何を言いだすかと想ったが雪に埋もれた家の中で只管待ち続ける日々を送る妻も辛い想いをしてるのではないかと考え気分を変えるのにもいいのかもしれないと想い妻の提案を受け入れた奥深い山の中に入らなければ危険はないだろうそう考えた時にあの小屋の中で出あった雪女の事を想いだした約束は破るなよ約束は破るなよ言葉が頭の中で繰り返される鳥肌が身体に走るあの場所にだけは今でも近づかない翌日早いめの朝食を取り2人は狩りに出た灰色の曇り空からは粉雪が静かに降っていた男は妻の事も考え無難なルートで山に入った膝まで雪に埋もれる道を歩きながら幾度か降り返るが妻は慣れた足取りで後ろからぴたりと付いて来る雪山の猟で鍛えた足腰だと自身があったのだが妻はそれを遥かに凌駕する足取りだった意外な妻の長所を見たようで男は驚..
未分類
kenji0y
2014-06-21T18:54:05+09:00
その日から女との暮らしが始まり
家事や料理は女が全てするようになった
それがとても自然な日常のように
以前からずっと続いてる暮らしのように
女はとても滑らかに生活の中に融け込んでいった
眼を覚ました時には女の肌があり
眠りに着く時にも女の肌がある
それが日常で在る事に変化した
女と暮らし始めた事は集落の人々にすぐに知れた
最初は突然に現れた女の事を不審に感じてるものも居たが
男に対する献身的な女の態度や
2人の幸福そうな暮らしぶりから
その想いは消えていった
同居を始めて半年も経った初夏を迎える頃
籍を入れて2人は夫婦になった
このままでもいいけど
男の腕枕の中で女は小さく呟いた後に妻の座を男に望んだ結果だった
男もそろそろそんな話しをすべきかなとは想ってはいたが
口に出せずに居た
シリアスは話しではないが
重要な話しは切りだすタイミングが難しい
それを先伸ばしにしていた
夫婦になって何かが眼に見えて変わった訳ではなかった
同じような日常が続く
僅かな違いは
少しだけ関係性に根が這ったような感じがした
2人自由に咲く花だったのが
樹に変化した
これから沢山の枝を着け
花を咲かせ
伸びて行く樹になるのだろう
朽ち果てるまで
夏も過ぎ
足早の秋が行き
夫婦になって初めての冬は
豪雪だった
男は山に猟に出るのだが
獲物を見つけられず手ぶらで
帰る日々が続いた
猟で獲物を持ち帰る事が出来なければ
収入は入らない
貯は在るのだがこの状態が延々と続けば
それも何時かは食い潰す
雪深い山の中では他に変わる収入源もない
狩りに頼るしかない
落胆の色が日々濃くなって行く男に
妻となった女が
夕食の後声を掛けた
明日は私が一緒に狩りに行きましょうと
男は何を言いだすかと想ったが
雪に埋もれた家の中で只管待ち続ける
日々を送る妻も辛い想いをしてるのではないかと考え
気分を変えるのにもいいのかもしれないと想い
妻の提案を受け入れた
奥深い山の中に入らなければ危険はないだろう
そう考えた時に
あの小屋の中で出あった雪女の事を想いだした
約束は破るなよ
約束は破るなよ
言葉が頭の中で繰り返される
鳥肌が身体に走る
あの場所にだけは今でも近づかない
翌日早いめの朝食を取り
2人は狩りに出た
灰色の曇り空からは粉雪が静かに降っていた
男は妻の事も考え無難なルートで山に入った
膝まで雪に埋もれる道を歩きながら
幾度か降り返るが
妻は慣れた足取りで後ろからぴたりと付いて来る
雪山の猟で鍛えた足腰だと自身があったのだが
妻はそれを遥かに凌駕する足取りだった
意外な妻の長所を見たようで
男は驚きもあったが
それより単純な喜びが大きかった
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recipe 女の居る暮らし
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-06-14
女の瞳の中に濃密で官能的な雰囲気が渦を巻き身体からも匂い立ってる女の肉体への欲望が挑発される柔らかそうな唇だそう想った次の瞬間には女の唇が塞いで舌が口の中で纏わりうごめいてた囲炉裏の火の燃える横で裸になった女と何度も抱き合い背中に手を廻し足をきつく絡める女の中で幾度も果てた幾度果てても欲望の火は収まらず女の身体から発散される欲情の波に煽られ憑かれたように抱き続け時間が経つのも忘れ明け方近くに倒れるように眠りこんだ目覚めた時には既に正午近くで身体に触れる裸の女の肌の温もりがあったおはようと女の口から柔らかで湿った声が漏れる女の指が身体をそっと這い気持よかった耳元で囁く女の濡れた瞳と視線が絡み合い返事の代わりに舌を絡め合う寝起きの欲情の火は女の中で3度果ててようやく収まった暫く女と余韻を漂った後にご飯は私が作るわと女が立ち上がり身支度を整え食事の用意をしだした米を炊き大根を刻み干物の鮭を焼く女の後ろ姿を見てとてもそれが新鮮に想えた自分の家の中で女が料理をする姿を見るのは初めてだった一人で暮らすのに不自由はないが女の居る暮らしもいいものかもしれないなそんな事を考えた女は料理を作るのは慣れてるようで男よりも手際良くスムーズに作り出来た料理を並べた焼いた鮭に出汁巻き卵大根の葉の浅漬けしめじとほうれん草のおひたしワカメと大根の味噌汁並べられた料理は自分の作る料理よりも色彩が鮮やかだったこんなとこに男と女の違いが出るんだろうなと感じた味も女の作る料理は美味かったそれを女に伝えると微笑みながら喜んだ食事を終え片付けた終わった女をこの辺りを散歩してはどうかと誘い2人で雪の積もる集落の近辺や山間の景色の良い場所を白く柔らかい雪を踏みしめながら2人で歩いた空は青く澄み渡り陽に照らされた雪の白さが眩しい程だった集落の見える小高い丘に着き腰を降ろし模型のようなサイズに見える雪に覆われた三角形の合掌作りの家並みを眺めてる時に女が身体を寄せて手を握り暫く此処に居てもいいかと聴いてきたアナタとはとても相性がいいみたいだし心も身体も含めてねそれにこの美しい風景はとても心が落ち着く此処に住んでみたいと好きなだけ居ればいいよと男は女に応えたこのまま女と暮らす事がとても自然な成り行きに感じた
未分類
kenji0y
2014-06-14T19:02:29+09:00
女の瞳の中に
濃密で官能的な雰囲気が
渦を巻き
身体からも匂い立ってる
女の肉体への欲望が挑発される
柔らかそうな唇だ
そう想った次の瞬間には女の唇が
塞いで舌が口の中で纏わりうごめいてた
囲炉裏の火の燃える横で
裸になった女と何度も抱き合い
背中に手を廻し足をきつく絡める
女の中で幾度も果てた
幾度果てても欲望の火は収まらず
女の身体から発散される欲情の
波に煽られ
憑かれたように抱き続け
時間が経つのも忘れ
明け方近くに倒れるように眠りこんだ
目覚めた時には既に正午近くで
身体に触れる裸の女の肌の温もりがあった
おはようと女の口から柔らかで湿った声が漏れる
女の指が身体をそっと這い
気持よかった
耳元で囁く
女の濡れた瞳と視線が絡み合い
返事の代わりに舌を絡め合う
寝起きの欲情の火は
女の中で3度果てて
ようやく収まった
暫く女と余韻を漂った後に
ご飯は私が作るわと
女が立ち上がり身支度を整え
食事の用意をしだした
米を炊き大根を刻み
干物の鮭を焼く女の後ろ姿を見て
とてもそれが新鮮に想えた
自分の家の中で女が料理をする姿を見るのは
初めてだった
一人で暮らすのに不自由はないが
女の居る暮らしもいいものかもしれないな
そんな事を考えた
女は料理を作るのは慣れてるようで
男よりも手際良くスムーズに
作り出来た料理を並べた
焼いた鮭に出汁巻き卵
大根の葉の浅漬け
しめじとほうれん草のおひたし
ワカメと大根の味噌汁
並べられた料理は自分の作る料理よりも
色彩が鮮やかだった
こんなとこに男と女の違いが出るんだろうなと感じた
味も女の作る料理は美味かった
それを女に伝えると
微笑みながら喜んだ
食事を終え片付けた終わった女を
この辺りを散歩してはどうかと誘い
2人で雪の積もる集落の近辺や
山間の景色の良い場所を白く柔らかい雪を踏みしめながら2人で歩いた
空は青く澄み渡り陽に照らされた
雪の白さが眩しい程だった
集落の見える小高い丘に着き
腰を降ろし
模型のようなサイズに見える
雪に覆われた三角形の合掌作りの家並みを眺めてる時に
女が身体を寄せて手を握り
暫く此処に居てもいいかと聴いてきた
アナタとはとても相性がいいみたいだし
心も身体も含めてね
それにこの美しい風景はとても心が落ち着く
此処に住んでみたいと
好きなだけ居ればいいよと
男は女に応えた
このまま女と暮らす事が
とても自然な成り行きに感じた
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recipe 一人
https://kenji-t.blog.ss-blog.jp/2014-06-07
女はお茶を一口飲み女同士ってね難しいのよ血が繋がっていても繋がってなくてもね同居となると尚更ね囁くように呟いた女同士か・・男の口から声が漏れた解らないでしょう?女同士の確執なんて解らないな身近にそういう存在も居た事がないし近い話しなら知り合いや友人から聴かされる嫁と姑の話しただ自分に関わりが無い分あまりリアルに感じられないそうね聴いてるだけなら本を読んでるのと変わらないものね姉妹が居るとか女の多い環境に身を置かなきゃ解り辛いでしょねでも大変そうなのは解るよ感覚としてね女の身の上に少し同情した女は小さな笑みを口元に浮かべありがとうと男に微笑んだ女の微笑みで場の雰囲気が急速に和み2人の距離が近くなったように感じた女がもう少しそっちに行っていい?と聴き膝と膝が触れる位の位置に座りなおした身近で見る露出してる肩から見えるよ女の肌はとても滑らかで妖艶だったタカオさんは此処で一人で暮らすようになってどれくらい?5年程経つよ父親が先に他界してその1年後に母親それからずっと一人だよ月並みな質問だけど一人で寂しいと想う事はない?私は時々在るから聴いてみたいなと想ってね女が目を覗き込むように言葉を吐いた最初一人になった時は違和感があったよ何か欠けたような感じのね存在が消えた痕跡みたいなのがあってねそれが馴染まないんだ生活の中でねでも日が経つに連れ薄まって行くんだ一人だって事が日常になって生活のサイクルになるとね逆に一人って事が馴染んで行くんだ今では一人に違和感は感じないよたぶんね寂しさはね感じにくい性格なのかもしれない痛みに敏感な人あまり敏感でない人って居るでしょうそれと似たような感じでね女は小さな頷きを繰り返しタカオさんは一人で暮らせる人なのね私が想うには2つのタイプに分かれると想うの一人で暮らせる一人では暮らせない人多数派が一人では暮らせない人ね私は一人では暮らせない人に分類される旅を続けてるうちにそれが身に染みて解ったほら旅をする事が自分探しだと言うでしょう実際やって見るとねそれは少しずれてる事だと解るの自分に出会うって事でもない自分のタイプやサイズが明確になるの日常生活で曖昧になってるものが削がれて余計なものが落ちるのよ正直になれるのよ自分にも他人にもねそれを言葉や態度で表現するかどうかは別にしてね正直になれるか・・呟きが口から零れたそう正直になれる女が言葉を被せる簡単なようで難しそうだね女は首を傾げて覗き込むように見つめて..
未分類
kenji0y
2014-06-07T19:24:41+09:00
女はお茶を一口飲み
女同士ってね
難しいのよ
血が繋がっていても
繋がってなくてもね
同居となると尚更ね
囁くように呟いた
女同士か・・
男の口から声が漏れた
解らないでしょう?女同士の確執なんて
解らないな身近にそういう存在も居た事がないし
近い話しなら
知り合いや友人から聴かされる
嫁と姑の話し
ただ自分に関わりが無い分あまりリアルに感じられない
そうね
聴いてるだけなら本を読んでるのと変わらないものね
姉妹が居るとか女の多い環境に身を置かなきゃ
解り辛いでしょね
でも大変そうなのは解るよ感覚としてね
女の身の上に少し同情した
女は小さな笑みを口元に浮かべ
ありがとうと男に微笑んだ
女の微笑みで場の雰囲気が急速に和み
2人の距離が近くなったように感じた
女がもう少しそっちに行っていい?と聴き
膝と膝が触れる位の位置に座りなおした
身近で見る露出してる肩から見えるよ女の肌は
とても滑らかで妖艶だった
タカオさんは此処で一人で暮らすようになってどれくらい?
5年程経つよ父親が先に他界してその1年後に母親
それからずっと一人だよ
月並みな質問だけど一人で寂しいと想う事はない?
私は時々在るから聴いてみたいなと想ってね
女が目を覗き込むように言葉を吐いた
最初一人になった時は違和感があったよ
何か欠けたような感じのね
存在が消えた痕跡みたいなのがあってね
それが馴染まないんだ
生活の中でね
でも日が経つに連れ
薄まって行くんだ
一人だって事が日常になって
生活のサイクルになるとね
逆に一人って事が馴染んで行くんだ
今では一人に違和感は感じないよ
たぶんね
寂しさはね感じにくい性格なのかもしれない
痛みに敏感な人
あまり敏感でない人って居るでしょう
それと似たような感じでね
女は小さな頷きを繰り返し
タカオさんは一人で暮らせる人なのね
私が想うには2つのタイプに分かれると想うの
一人で暮らせる
一人では暮らせない人
多数派が一人では暮らせない人ね
私は一人では暮らせない人に分類される
旅を続けてるうちに
それが身に染みて解った
ほら旅をする事が自分探しだと言うでしょう
実際やって見るとね
それは少しずれてる事だと解るの
自分に出会うって事でもない
自分のタイプやサイズが明確になるの
日常生活で曖昧になってるものが
削がれて余計なものが落ちるのよ
正直になれるのよ
自分にも他人にもね
それを言葉や態度で表現するか
どうかは別にしてね
正直になれるか・・
呟きが口から零れた
そう正直になれる
女が言葉を被せる
簡単なようで難しそうだね
女は首を傾げて覗き込むように見つめて
タカオさんは旅に出る必要がなさそうね
とても正直な人に見れるもの
そうなのかな自分で解らないよ
自分自身のそういう部分は
女は柔らかな手をそっと膝の上に載せ
顔を近づけて
囁くように
私には解るわ沢山の人を見てきたから
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