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recipe かんずり


葬儀を終え暫くしてから
49日も終わった頃
夜に男が家で囲炉裏を囲み寛いでいると
雪を踏む音が近づき
家の戸を叩く音が聴こえた
戸を開けるとそこには旅姿の美しい娘が立って居た
ただ単に美しい
それだけでなく
美しさの中に翳りを帯びていた
旅の途中なんですが道に迷ってしまって泊まるとこもなく
困ってしまっていたんですが此処の明りが見えたので
立ち寄らせて貰いました
ご迷惑かと想いますが一晩泊めて頂く訳にはいかないでしょうか
無理なお願いとは承知していますが
伏せ目がちに女は言葉を紡いだ
立ち話をしてるだけだが
女の身体からは若い女の香りが漂っていた
男は断る理由も見当たらず
それよりも女に対する好奇心で心は満ち溢れた
女を家の中に招き入れ
囲炉裏の傍に座る事を勧めた
夕食は済ませたのか女に聴くと
道に迷っていたので
食事は取ってないとの事だった
男は既に夕食を済ませていたが
女の為に作る事にした
男は一人暮らしで既に両親は他界していた
食事の支度も手慣れたもので
料理をすることは男にとって日常だった
囲炉裏に鉄鍋を釣り
昆布と鰹で取った出汁を入れ
沸騰した頃を見て
夕食で作ったご飯を追加して
適度に柔らかくなったところに
刻んだ柚子の皮と細かくカットした大根の葉を散らし
締めに溶き卵を入れた
卵が半熟になったのを確認して
御椀に出来あがった雑炊を注ぎ
木製の蓮華を添え
女に手渡した
雑炊を受け取ると女は柚子の香りがいいと呟き
口に運んだ
女の口からは美味しいと言葉が零れた
それはとても自然に漏れた言葉に感じ取れた
気を使ってとかではなく
舌が感じたままを言葉にした
そんな感じだった
男は女が雑炊を味わってる間に
小皿を2つ用意した
一つは大根を薄くスライスして昆布と塩と唐辛子で
浅漬けにしたもの
もう一つはかんずり
かんずりは男の棲む地域で作られる保存用の調味料の一つで
唐辛子を雪に晒し麹等を使い発酵させたもので
液状になった唐辛子の調味料
小皿と箸を盆に載せ女の傍らに置き
それはかんずりで辛みが在り刺激的だが雑炊に入れると身体が温まる
もう一つは大根の漬けもので雑炊だけではもの足りなさを感じるので
説明をして女に勧めた
女は小さく頷き箸で大根の浅漬けを一つ摘まみ口に運んだ
小さな濁音が女の口から漏れ
美味しい御漬物ねと口元に笑みを浮かべた
ただの大根の浅漬けですよ
女の笑みに釣られ口元が綻びながら応えた
女はかんずりに視線を移して
辛そうな匂いね
これはどの程度入れたらいいの?
初めてだったら子指の爪半分くらいの量がいいと想う
辛みの感じかたは人によって違うから
少しの量で試すのがいい
じゃあ初めてだから
女は蓮華でかんずりを少しだけ掬い
雑炊に入れ軽くかき混ぜて
蓮華で口に運び込んだ
これは好きな味
私には大丈夫な辛みね
それなら良かった
少しの安堵が訪れる
勧めた食べ物が口に合わないと言われると
落胆を味わうが
口に合うと心地いい

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天海 彩

かんずり、聞いた事ない食べ物。
なんか、いやらしくて楽しそうだから、
探してみよ~♫
by 天海 彩 (2014-05-27 11:30) 

kenji0y

天海 彩さん

粘度が強く
生々しい和風のタバスコ
。。
そんな感じかな (= ̄ω ̄=)ノ〇



by kenji0y (2014-05-27 23:41) 

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