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recipe 鴉

聴き慣れた羽音が耳に触れる
艶のある黒い羽根が雪子の傍らに舞い降りた
声無き静かな会話が始まる
空から見下ろすと
此処の集落で誰が何をやってるか
何処に居るか解るんだ明確にね
人だけで無く
犬や馬その他の動物までも
前後の動きや周りに気を配っても
空までも気にする奴はそう居ない
そもそも空から見られてる
そういう発想が欠けてるからね
もし姿に気が付いても
呑気に飛んでるんだなとしか想ってない
上から見られるって事に関しては
無防備なんだよね誰もが
空から襲撃されるって事が殆どないから
そうなるんだろうけど
雪子はそうねと頷いた
雨か雪でも降らない限り
空なんて人は見上げたりしないものだ
ところで雪子
最近妙な奴らがうろついてるよね
淀んだ匂いがするんだよね
そうねそんな感じね
濁りが身に付いて纏ってる
雪子あいつらロクなもんじゃないね
鴉にロクなもんじゃないんなんて言われるなんて
哀れな感じもするが根の深い奴らだ
そうそう
集会所で奴らの元締めと
タケシの話しを聴いたんだけどね
此処から10人程連れて行くらしいよ
女も一人混じってるって言ってたよ
誰?それ
黒蜜って言ってたかな
小夜それって何時の話し?
小夜は雪子がこの鴉に付けた名前で
名前を持たなかったこの鴉は名前を持った事を随分気に入ってる
此処に来るちょと前の話しだよ
そう・・
雪子は目を伏せた後に視線を空に移した
奴らを死の淵に落とす事等その気になれば造作もない
そうなれば黒蜜は家に戻れるだろうが
そのうちにまた何処かに売られる嵌めになるだろう
留まる場所も無ければ
行く場所も無か
黒蜜には死んで来世に期待するくらいしか
可能性は無さそうだ
残酷な未来が待ってるなら
私の手で静かに眠らしてやるか
苦しむ事も無く
痛みも無く
静かにに永遠の眠りに就ける
黒蜜ももう少しマシな家に生まれれば
違った未来を選ぶことが出来ただろうに
貧困な家に生まれる事は困難な生き方を背負うもんだ
好き好んで選択したのではないが
私が私で在りたい為に生れて来た訳ではない
生まれ育って環境に左右され私に成ってる
そんな言葉が頭に浮かんだ
ねえ雪子黒蜜に教えてあげた方がいいんじゃないの
あんな奴らに着いて行ってもロクな目に合わないって事を
小夜黒蜜は解ってるのよ
でも出来ないのよ断る事が
え??なんで
家庭の事情って奴よ
人間の世界って複雑なんだね
逃げだせばいいだけだと想うんだけね
そうだ想いだした
黒蜜は棺桶屋と御団子食べてたよね
最近御団子食べてないなあ
食べさせてあげるわよ
御団子欲しいなら
小夜の黒い瞳を覗き込んだ後に
雪子は棺桶屋ねと小さく呟いた
屍を埋める男は
濁っていなかった

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