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翌日山一つ越えた街の市場に鹿肉を売りにでかけ
高値で売る事ができた
今年の豪雪で鹿は不猟だった為
高値が着いたのだった
収入が3カ月無くても暮らせる程の金額だった
男は妻の功績もあるので
妻に土産を買って帰った
鹿の代金と土産の袋を渡して
靴を脱いだ頃に妻の喜びの声が漏れた
妻の手には1本の朱色の簪が握られていた
似合うと想ってと妻に言葉を伝えた
とても素敵な簪
妻の口から溜め息めいた言葉が零れた
束ねた黒髪に妻は土産の簪を挿して見せた
その朱色の簪は妻にとても似合っていた
鮮やかな朱色が妻の持つ艶のある黒髪や
静かなる佇まいの美しさを引き立たせている
とても似合っている
妻はとても嬉しそうだ
女は贈り物を喜ぶ
誰かが口にしていたのを想いだした
時々こうやって妻を喜ばせてやろう
それは言葉にせず心で密かに決めた
簪がよほど気に要ったのか
それとも男の行為が嬉しかったのか
それ以降寝る時意外は簪は常に妻の髪の中にあった
朱色の簪が妻の髪に在るのが日常となった頃に
少しづつ妻の腹がふっくらと膨らみ始め
雪が融け春が訪れた頃には明確になった
数か月もすれば父親になり母親になるのだと
その年の夏が過ぎ冬の訪れを肌で感じる頃に
妻は女の子を出産した
名前を千鶴と着けた
鶴のように永く生きれますようにと
美し在りますようにと
千鶴は1年も経たない内に
歩く事が出来るようになり
言葉を憶えるのも早かった
容姿も子供ながらに妻の面影を携えてる子で
可愛らしさの中に美しさを湛えていた
それを妻に漏らすと
それはただの親ばかよと
笑われるだけだった
それと
錯覚だろうなとの想いはあるのだが
千鶴を見てると
そこに妻の幼少を見てるような感覚があった
それを集落の幼馴染の妻に語ってみた
女から見たらそういう感覚はないのか
確認して見たかった
幼馴染の妻は自分の生んだ女の子を見てると
隣に子供の頃の自分が居て
同じ事をやってる感覚かなと
語ってくれた
感じた事と同じようなんものだと納得した
ついでに男の子だったら
どんな感じか尋ねた
彼女は即答でまんま旦那の子供の頃
そう応えた
彼女は女の子一人と
男の子2人産んで居る
生活は大変だが子供はまだ欲しいそうだ
その感覚は理解できそうになかった
単純に男と女の感覚の違い
もしくは育った環境の違い
少ない人数の家族で育ったから
大勢居るのは馴染めそうもなかった

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