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recipe 鹿


1時間程歩き
休憩を取った
雪山とは言え足場を取られる雪道を1時間も歩けば
うっすらと汗が滲む
隣に腰をかけた妻の様子を見ると
涼しげな顔で息一つ乱れていない
意外と女の方が持久力は在るもんだと感心する
座って妻と談笑をしてる時に
男は少しだけ狩りのレクチャーをした
動物の足跡や糞が雪に残っている
それを身落とさない事が大事だとか
動く獲物を見つけても
自らが動けば
自分の位置が風上だとすぐに悟られる
伏せて待ち
悟られないように近づき
一撃で仕留める
狩猟とはそういうものだ
狼の狩りみたいねと妻は言葉を漏らした
男は頷き
似てるかもなと呟いた
10分程休憩を取り
再び歩きだした
視界に映るのは全てが真っ白な雪に覆われた木々や山の斜面
動くモノのない無音の世界に2人で居るようだ
獲物の痕跡も姿も何処にも見当たらない
ただ雪の世界だけが延々と広がっている
確実な事は
獲物は何処に静かに潜んでいる
それを見つけられるか
それとも見つけられずに徒労に終わるか
何れかだ
妻の足のリズムなら当初の予定を変更して
獲物の潜んでいる可能性の高い山の奥近くまで足を延ばしても大丈夫だろう
そう判断して
ルートを変更して山の奥の方に向かった
妻はペースを乱さず黙々と着いて来る
途中で休憩を1度取り
時間にして昼前に当たる頃
妻が雪に埋もれた岩山の影を指差し
鹿の影が見えたとそっと背後から耳打ちをした
見渡す限りでは鹿の姿は無く
静かな雪景色だけが横たわって居る
岩山までの距離は約80m
男の持つ猟銃の射程距離は無風状態で約70m
向かい風だとさらに距離は短くなる
男は妻に腰を屈めるように手で合図をし
自身も屈み背中に背負っている猟銃を降ろし
腹ばいになった
柔らかく冷たい雪の感触がじんわりと身体に伝わる
隣で妻も同じ姿勢を取り
岩山に視線を張り付かせている
静止した風景に溶け込んだ2人に時間だけが流れる
空からは小さな粉雪が舞い始めた
視線の先の岩山の付近にも粉雪は
舞い降り真っ白な雨のように
風景の絵具で世界を塗り変えて行き出した
小さな風が頬を撫で通り過ぎる
舞い降りる雪に小さな変化が現れる
雪の流れが左右に揺れぶれたように見えた
次の瞬間には流れは巻き上がる渦に変わり
粉雪を巻き散らし始めた
岩山の影から雪が大きく動いた
そう見えたのは眼の錯覚で
潜み雪に塗れた大きな鹿だった
遠目だが体重は100キロ程ある大物だ
鹿の姿に反応して猟銃の先を向けるが
射程距離に及ばない
鹿はこちらの存在に気が付いていない
首を振り辺りを窺っている
渦を巻き舞い散る雪にただ動けずに居る
小さな粉雪は粒の大きな雪に変化して空から降り注ぐ


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天海 彩

そう考えると、恋愛と狩りは似てますね。
あ、あくまで私の場合です。
ケンジさんも確か、罠猟はしませんでしたね。^^V
by 天海 彩 (2014-07-05 08:45) 

kenji0y

天海 彩さん

罠猟はしません!
ので

狩りは手掴みです (= ̄ω ̄=)ノ〇


by kenji0y (2014-07-05 22:27) 

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